2008.08.12 (Tue)
「溺れる体温」 菱沢九月
内容は意外なほど硬派で読みごたえがある。
![]() | 「溺れる体温」 (ラキア・スーパーエクストラ・ノベルズ) 菱沢 九月 ハイランド 2002-06 by G-Tools |
七飯は蜜にまみれて喘ぐ。言えない言葉を掬ってくれる、年下の恋人の
恐ろしく熱い脈動がはしたないほど欲しいのだ。こんなにも―。
七飯章吾は、兄の死で彼の悔恨を知り、その遺志を継ぐ。だが新聞記者の現実に擦り切れ
そうになった時、リョウに逢った。逢えたのだと思う。端整で無邪気で無防備な子供。一途に
ふれてくる唇。リョウに支えられ、七飯は真実の扉を見つけるが。
ストーリーは七飯(ななえ)が新聞記者として事件を追いかける様と平行して、兄が追っていた事件の真相解明と、さらにリョウと七飯の恋愛も同時に展開していく。
2008.07.23 (Wed)
「小説家は懺悔する」 菱沢九月
きっともう、この心臓は二度と死なない。
![]() | 小説家は懺悔する 菱沢九月 高久尚子(イラスト) キャラ文庫/徳間書店 2005-03-26 |
俺を何度も抱くのは小説のネタにするため…?
小説家・佐々原脩司の家に同居し、ハウスキーパーとして働き始めた律。佐々原は
ベストセラーを連発し、映画化も控えている人気作家だ。仕事上の好奇心だと言っては
何度となく律を抱く佐々原。律は強引な佐々原の思いのほか優しい愛撫に流され、
次第に心まで溺れてゆく…。ところが、佐々原と主演女優のスキャンダルが発覚し!?
律も脩司も「身近な人間の死」がトラウマになっているから、背景は重いけど、
ストーリーは暗くはない。
食事をしたり、ベッドで身体を重ねたりと、日常を重ねながら、二人は少しずつ
自分の傷を打ち明けあける。
しかし、互いの傷を舐めあうような関係にはならない。その痛みをただ受け止めるだけだ。
「どうしたら俺のこと見捨てないでいてくれる?」
この脩司の言葉の、必死な切なさに泣けてしまう。
生きているってことの煩雑さを、いとおしく思えてくるような、ほんのり切なくて優しい読後感。
気持ちを確かめあうラストが心に沁みる。
続編に「小説家は束縛する ―小説家は懺悔する(2)」
ラブラブだけど、ちょっぴり遠く感じてしまう恋人たちの距離感は、たぶん誰でも経験すること。
互いを思う心と、二人の結びつきの深さがよくわかる。
2008.06.13 (Fri)
「年下の彼氏」菱沢九月
シンプルなタイトルがいい感じ。
「俺の彼氏になって下さい」――七つも年下の大学生に告白された、
塾講師の石田楓(いしだかえで)。
賢い大型犬のように優しく頼もしいバイトの鴻島涼平に、密かに片想いしていた楓は、
喜びより戸惑いに混乱する。始まったものには、いつか必ず終焉がくる…。
甘い蜜月の中で、楓はひとり予感に怯えるが!? 諦めていた恋が成就する、
嵐のような幸福と不安――恋愛の光と影を繊細に綴る、純愛ラブ・ストーリー。
淡々とエピソードを積み重ね、人を恋することの幸せと不安が、
もどかしいような優しさを滲ませながら描かれていく。
日常に変化を求めず、傍観者でありたいという楓の感情は、
言わば眠り姫のような状態に近い。
その孤独をも飲み込んでしまっている楓自身は、
その寂寞に気づいていないあたりが痛々しい。
その眠り姫を叩き起こすのが、年下にして器の大きい涼平くん。
20才にしては涼平は大人すぎると思うけど、そこは乙女の理想ってことで

二人の恋の始まりから、その関係が深まっていく様子を見詰める視点が、
おだやかな空気がたゆたうようで、読後感が心地よい。
![]() | 年下の彼氏 (キャラ文庫 ひ 2-7) (2008/05/23) 菱沢 九月 商品詳細を見る |




