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2008.07.16 (Wed)

「私説三国志 天の華・地の風」シリーズ 江森 備

「江森三国志」とも言われる三国志パロディ本の力作。
「同性愛がなければ」という怨嗟が絶えない、いわくつきの作品でもある。
冷徹怜利のカリスマ軍師である諸葛亮孔明(以下本書の表記に従い、
諸葛亮ではなく孔明で統一)が同性愛者として描かれているばかりではない。
劉備を中心に蜀内部の血みどろな権力闘争をストーリーの本流として、
登場人物の各人を欲もエゴもあり嫉妬もする生々しい人間として捉えている。
どろどろした人間関係や、水面下での攻防などもリアルに描かれているのも面白い。
つまり、三国志を下敷きにした数ある作品の英雄像をきっぱり裏切っているのだが、
それはこの作品において必然なのだ。

愛を求めつつも、孔明の根底には根強い人間不信がある。
彼にとって他者は利用価値があるか否かでしかない。
たとえ愛を与えられても頑なに心を許すことができない。
それゆえ人々に一目を置かれながらも、孔明は常に孤独だ。


  肉からはじまった愛はどんなに固く心を繋ぎあおうと、
  結局、肉欲であることに変わりはないのだ。


悦楽に狂乱しながら、孔明の意識はどこかで醒めている。
その孤独な魂を際だたせるための道具立てとして、孔明は同性愛者という異端の立場を与えられている。
さらに、従来は英雄譚として語られる孔明を巡る人間模様が、
身内をも含め矮小に描かれる<必然>を、流麗にして硬質な文体で描き出している。

濃密に描かれた心理描写とともに、政治、経済、戦略戦術、陰謀についても丁寧に、
要所要所で正史の記述が矛盾なく組み込まれており、男色シーンでつまずかなければ、
三国志ファンがハマる要素大――がんばれ!
――ただし、劉備ファンは読まない方がいいかもしれない。

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22:10  |  江森 備  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2004.01.09 (Fri)

「私説三国志 天の華・地の風 九」 江森備

「おまえがのぞむなら、命も惜しまぬ」



孔明は姜維や娘の朝薫、細作数名を連れ、微行で呉へと向かう。
目的は孔明の兄の諸葛瑾に会うこと。
その旅がきっかけとなり、姜維と朝薫は互いに心惹かれる。
そして孔明も、姜維を娘の婿とするつもりでいた。

だが、夜更けに朝薫の元を訪れようとした姜維は、孔明と魏延のことを目撃してしまう。
さらに魏延の言葉から、孔明が自分に良く似ていたという周瑜とも関係を持っていたことを知る、
のだが――正直に言ってしまおう。この最終巻の粗筋はあまりにも苛烈で書けない。
実はそれでUPまで時間がかかってしまった(心弱い乙女なの…笑)。

物語はラストに向けて急速に収斂していく。
そのストーリー運びにも無理がなく、綿密に張られた伏線が後半になればなるほど生きてくる。

孔明を憎悪し、執拗に命を狙う暗殺集団・赤眉の首魁たる男の正体に驚かされる。
男は、司馬仲達の軍師となっていたが、孔明の過去を丁寧に調べた仲達にその正体を見破られ、
殺されてしまう。なぜ敵対している仲達が孔明の仇敵たる男を取り除いたのか分りにくいのだが、
その男の孔明に対する憎しみ、哀しみは哀れでもある。

だが一番の衝撃は、孔明が非業の最期を遂げることだ。この結末は、表面上の史実は同じなのに、
江森氏にかかると今までの三国志が浅く感じられてしまほど。
二次創作としては掟やぶりかもしれない創作人物の用い方などにも違和感なく、江森氏の力量に、
ただただ感服。

最後まで孔明に付き添う魏延がいい。男気のある「これぞ男」――それとも、恋のなせる業かな。



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11:56  |  江森 備  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2004.01.09 (Fri)

私説三国志 天の華・地の風 八

この人は、鎖に繋がれている。



孔明が病に倒れた。その報せを得て、魏は漢中に総攻撃をかけることを決定する。
漢中南山下原で養生していた孔明の元に知らせがはいる。気力で孔明は本復するが、
自分の留守をあずけたはずの李厳の不誠実のために「博打以下」の戦を強いられることになる。
魏の進軍開始に際し、敵が迫り手に余る事態になった時を備えて、孔明は高翔、李恢、王平、姜維の
4人に錦袋入りの命令書を渡す。
さらに、孔明が主要の糧秣輸送路として使っていた米倉道が賊の襲撃を受けたり、雨で寸断される
などアクシデントが続き、ついに糧秣不足となりつつあった。

たが、李厳の配下である苟安の運ぶ米に限って、常に5日以上遅延し、量も半ば以上失っていた。
苟安の不実を見抜いた孔明は、大雨のせいだと言い逃れようとする苟安を厳しく詮議、処罰する。
ほうほうの態で李厳の元に逃げ帰るかと思われた苟安は、だが、魏の司馬懿の元へと走ってしまう。
しかし降り続く大雨のために戦況は膠着、両軍とも撤退を余儀なくされる。
一方、都では孔明謀反の噂が何者かによって撒き散らされ、孔明は入朝を命ぜられる。

劉禅の権力を後ろ盾にした政敵・李厳との陰湿な確執、水面下の攻防など、
丁寧な描写が重厚で面白い。
戦場での仲達との邂逅が印象的――男としては面白みはないと思うのだけど、
仲達は敵としてあっぱれ!



*この記事は website【CAFE唯我独尊】から移行しました。


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11:55  |  江森 備  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2004.01.09 (Fri)

「私説三国志 天の華・地の風 七」 江森備

「あれは、贄(にえ)



街亭での大敗戦から2ヶ月後。孔明は趙雲、魏延ら主力を漢中に残したまま、成都へ帰還する。
敗戦の責任を取るつもりで戻った孔明を、成都は凱旋将軍を出迎えるがごとき歓呼の声で迎える。
敗戦は、朝廷によって勝利とすり替えられていたのだ。
形を重んじる孔明は敗戦の責任をとって丞相の座を退きたいと劉禅に言上し、地位は降格されるが、
その代わりに右将軍として国政の重責を担うことになる。
劉禅は自分の地位の安定のために、孔明をおだててこれ以上の遠征をやめさせ、
孔明の名が天下に示されるのを阻止したいのだ。
劉禅は側近たちと、孔明追い落としを画策していた。

一方、仲達は『仕女王氏図』に描かれている待童を孔明であることを認めながらもいぶかしみ、
孔明の過去を探っていく。

この仲達がなかなかの傑物。
「劉禅の考えることなど、しょせんはお坊ちゃまのお遊び」と言い切り、
劉備にして「本能と行動力でのし上がった人物」と見切っている。
陰謀、策謀蠢く身内にあって、敵である仲達が海千山千とはいえ、
人間的に出来た男であるのが、孔明にとって慰めか。
――もちろん孔明はその幸運を知らないのだが。


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2004.01.09 (Fri)

私説三国志 天の華・地の風 六

おまえに死んでほしくない。



50万の大軍と1年もの歳月を要した南蛮王・猛獲の征伐から2年後。
漢丞相・孔明は「出師の表」を表して劉禅から魏討伐の許可を得る。
漢中から長安をうかがう蜀軍のもとに、呉にいる諸葛瑾から、魏の司馬懿には要注意との
手紙が入る。呉の荊州軍も先の江夏石陽の役で、司馬懿によって大敗を喫していたのだ。
曹操に疎まれた司馬懿だが、曹丕には目をかけられ、曹丕が魏の文帝となってから頭角を
現わしていた。司馬懿の弱点を探るべく、孔明は細作を放つ。

一方、孔明自身は魏延らと共に興国へ微行する。
側近は孔明の身を案ずるが、先の猛獲との戦いの後、孔明の猛獲に対する温情ある扱いを見て、
――諸葛孔明は、中華人の血にはこだわらないらしい。
   夷狄(いてき)の我々にも、同じ権利を認めてくれるらしい。
という噂が流布。魏に押さえられていた西戎夷狄の人々の希望ともなっていた。
無論、それも孔明の周到な根回しの結果だが、魏に襲われるまで馬超に仕えていた蒲阿里は、
孔明に恭順を表す。
さらに孔明は敵対していた天水郡を落とし、その中郎将であった姜維(きょうい)を側近に重用する。

孔明と魏延との結びつきがより深まり(ほとんど新婚さん…笑)、しかし処女(おとめ)であるはずの
孔明の妾の懐妊、少しずつ深まる皇帝・劉禅との溝、さらに養子・諸葛喬の戦死と、
孔明の身辺が慌しい。
さらに、孔明にとって忌まわしい『仕女王氏図』がある裏切りによって、魏の司馬仲達の手に渡り、
今後の波乱を予感させる。
ここで登場する姜維はのちのちまで孔明に深く関わってくる。




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