2017年11月 / 10月≪ 123456789101112131415161718192021222324252627282930≫12月

--.--.-- (--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告  |  EDIT  |  Top↑

2009.05.25 (Mon)

「完全版 金環蝕」山藍紫姫子

「賭けは、カートの肉体」


ときどきふと読みたくなる山藍紫姫子さんの世界です。
ノーブルで退廃漂う「カート・フレグランス大佐」に陶酔……(笑)。

4872572327完全版 金環蝕
山藍 紫姫子
イーストプレス 2000-11

by G-Tools


【内容】
敗戦後、私ことメルローズ・ビシャスは、父の事業を助けて一族の再興を計ろうとしていた。
そこへ、かつての敵軍将校であるクライシスから夏城への招待状が届けられる。
その敵国人たちの恩恵に与かり、商売するしか一族を養えない私に拒否することはできない。
向かった夏城で、私は敬愛してやまなかった上官カート・フレグランス大佐と再会する。
戦犯として処刑されたはずの彼が生きていたことに驚きつつも、懐かしさでつい声をかけた私にカートの返答は素っ気なかった。
やがて私はその理由を知ることになる。
神秘的な美貌と英知で多くの崇拝者を得ていた大佐は、生死に関わる負傷から目覚めた後、クライシス・ロールシャハティによって夏城に囚われる性奴に身を堕とされていたのだ。
クライシスの客である私にもカートを抱く権利があるという。クライシスは、誇り高い大佐をいたぶる手段として、かつての部下であった私に陵辱させようとした。
カートのしどけない姿を見せつけられた私は、敬愛し続けた上官を力によって自由にできるという、倒錯的な欲情に囚われてゆく。

【書評】
小林智美さんの表紙イラストでよかった~。というのも、1992年に発売されたハードカバー版の短編集『金環触』(白夜書房)と同タイトルなので、小林さんのイラストでなければ読了済みと思って手に取らなかったかもしれない(私は小林智美さんの大ファンである)。
完全版とされる本書は丸々一冊「カート・フレグランス大佐」の連作集となっている。
黒い髪、エメラルドの瞳。華奢で美しく、厳格ではあったが敬愛されていた元上官の背徳の性と、退廃的な雰囲気――陶酔しましたとも。

悪魔的魅力のクライシスのダークで歪んだ心理は、娯楽のためにカートをゲームの駒に堕して喜ぶ。
そして常識人であるはずの紳士たちは、カートの身体にクライシスによって刻まれた被虐の性に群がっていく。そんな紳士たちの陵辱に慄きながら、カートは「金環蝕」にたとえ、密やかに冷笑する。

    「外見は、黄金色に輝いてみえるが、――この裡(なか)は、黒々と腐りはてている…」

だが彼らを支配しているのはカートだと、メルローズは胸に呟く。
己も含めて、快楽の檻に囚われているのだと。

    金環蝕は、天空の太陽が、月も地球も、すべてをその支配化に治めた瞬間でもある
    のだ。(中略)
    「金環蝕は、すべてを内包した、完璧な姿なのだ」と。

それはクライシスの内奥のジレンマをも表している。
クライシスのカートに対する態度はまるで人間扱いしていないように見えながら、その実、深い渇えが窺える。
冷静に計算された狂気じみたクライシスの言動に、カートは翻弄される。心ではメルローズを求めつつも、次第にクライシスに恋にも似た離れがたい感情を抱きはじめる。
それすらも、クライシスの計算のうちであるのかもしれない。彼のジェラシーに燃える熱い身体のみが、カートの心と身体に刻まれた痛みをやわらげることができるのだから。
そんな「熱」を孕んだ支配者と被支配者の間にある危うい均衡は蠱惑的だ。そして魅了されてしまうのだ――メルローズのように。

男同士の幾重にも屈折した愛憎に、物語的あざとさを加味してノスタルジックな情感が漂う作品となっている。得体のしれない何ものかに、どろりとした底なし沼のように深い色のソース(情念)が絡みついているような様は、奇妙に美しく、鍵穴から情事を覗いているような気分になる。

メルローズとカートが戦場でのことに触れたシーンがちらりとあって、その戦場のシーンをもっと読みたいのだけど、物語の進行上、たぶん、ただれたシーンは入りそうもないだから、これは個人的な趣味の問題ね(笑)。
短編集でも密度は濃い。知的かつ官能的に読者をもてなしてくれる作品。と、書いてみたけど、ホントはどうでもいいの。だって「山藍紫姫子」さんなんだもん。

余談だが、1992年発行版では、耽美な作品のほか、妖精などのイラストを描いている青年が、妖精の故郷を訪ねる旅先のヨーロッパで本物の妖精を捕まえ、東京に連れてくるという、山藍作品にはちょっと珍しいコメディタッチの作品など5作品が収録されている。この妖精の話が何だかお気に入り。
(2002,12,18記)



関連記事
スポンサーサイト

テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

23:52  |  山藍紫姫子  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2006.03.18 (Sat)

「アレキサンドライト」山藍紫姫子

山藍さんらしい、ノーブルな香り漂う耽美な・・・これはポルノグラフィである。
タイトルの「アレキサンドライト」とは、光によって緑色であったり紫色に変化する宝石で、
作中では、主人公シュリルの両性具有の性を象徴している。

1992年白夜書房から上梓、'95年にはコアマガジンから再販されたが、
この度、角川文庫でさらに再販されたことを記念して(?)、再読。
私が持っているのは白夜書房版なのだけど、もちろん今読んでも全然古くないどころか、
BL世代には逆に新鮮なんじゃないだろうか。

虜囚にされたシュリルは、屈辱的な陵辱で、性の悦楽をたっぷり仕込まれることになる
のだが、その描写のあけすけさは、いっそ厳粛なくらい。
とにかく念の入った描写で、官能というものをフレグランスのように立ちのぼらせている。
暴力と絶対的な権力が支配する世界に晒されながら、肉体と心はいつも背を向け合って
いる。エロスの深淵とはそういうものなのだろう。

山藍さんの作品は、濃厚な官能を放出しつつも、その尋常ではない世界から、
やがて荒涼とした寂しさが滲み出てくる。
その寂しさは、愛を渇望する、熱く切ない思いだ。
流麗な文体から立ちのぼる官能、これこそが耽美というもの。

2006年2月に角川文庫で、大幅な加筆修正のもとに再販。
驚いたのは、角川ルビー文庫ではなく、一般書として出版されていること。
角川さんてば、チャレンジャーだわ(笑)。


アレキサンドライト (角川文庫) アレキサンドライト(角川文庫)
 山藍紫姫子









関連記事
■ 作者紹介
■ 長恨歌
■ 金環蝕
■ スタンレー・ホークの事件簿(シリーズ)
■ 闇を継承する者日影成璽(シリーズ)
■ 花鬼
■ 王朝恋闇秘譚
■ 完全版 虹の麗人―『イリス・虹の麗人』
■ アレキサンドライト

テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

00:53  |  山藍紫姫子  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

2004.12.24 (Fri)

「王朝恋闇秘譚」山藍紫姫子

王朝の世に咲く妖しい花、笛人の綾王。男たちを魅了し、惑わすことを生業とする彼のもと
に、ある夜、謎めいた文が届き―復讐がはじまった。
平安の世を舞台に官能の美を描いた至極の愛の物語。(本書帯より)

4043702043王朝恋闇秘譚 (角川文庫)
山藍 紫姫子
角川書店 2007-05

by G-Tools


【感想】
舞台の平安という時代に、私はどうも艶冶で妖し(陰陽師とか)の世界という妄想を膨らませる癖がある(笑)。ついそのイメージを刷り込んだまま読んでしまった…あうあう。

美貌の綾王は、弟と守るために中童子(性欲処理のための稚児)となる。心の伴わない行為では相手を適当にあしらえた綾王だったが、愛憎の狭間に置かれたとき、彼はその愛欲に溺れ、翻弄される。そのあたりの展開は、山藍さんらしい耽美。
支配する者とされる者という社会構造で、綾王は最後まで弱者として描かれている。
最後に救いがあるものの、苦手な方はホントにダメかもしれない。実は私がそのクチで……鬼畜でもSMでも、たとえ相手がジジイでもと、許容範囲は広い私だけど、唯一、近親相姦ネタは生理的にどーしてもダメなんである。
ちなみに半分以上が官能シーン。とっても淫靡で淫ら(笑)。


関連記事
■ 作者紹介
■ 長恨歌
■ 金環蝕
■ スタンレー・ホークの事件簿(シリーズ)
■ 闇を継承する者日影成璽(シリーズ)
■ 花鬼
■ 王朝恋闇秘譚
■ 完全版 虹の麗人―『イリス・虹の麗人』
■ アレキサンドライト

テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

00:02  |  山藍紫姫子  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2004.10.28 (Thu)

「完全版 虹の麗人」山藍紫姫子

「…わたしは、出来損ないのヘルマフロディテだから……」


1995年6月 コアマガジン(初出 1992年 白夜書房)

私が初めて触れた山藍作品だけに印象深く、また、数年ぶりに再読しても充分楽しめた。
「ちょっぴりハードでスリリングな恋を夢見る貴女のための」男同士のハーレクインを書くという
企画で書かれた作品で、同人誌で発表された。尚、同企画には『冬の星座』『アレキサンドラ
イト』がある。

4776792656イリス 虹の麗人
山藍 紫姫子
宙出版 2006-01-26

by G-Tools


研究所で働くイリスは、その身体の秘密ゆえ、人を殺してしまった過去を持つ。両性具有の
性のために両親からも否定され、心に深い傷を抱えるイリスは、頑なに心を閉ざす事で自分
を守ってきた。後見人であるクラーク・ダリ伯爵はイリスの立場とその心を心配し、自分のこと
ろに来ないかと申し出る。しかし、生態学研究所の所長という肩書きを持つクラーク・ダリにま
つわる忌わしい噂ゆえに、イリスは彼を警戒し、怖れてさえいた。
だが、その身体の秘密を知る男の出現でイリスは追い詰められ、悩みぬいた末に、クラーク・
ダリ伯爵の申し出を受け入れる。
研究所に連れて行かれるはずのイリスは、クラーク・ダリの居城に迎えられる。戸惑い、慄き
ながら、イリスはクラーク・ダリによって愛することに目覚めていく。

【書評】
広大な城、天蓋付きベッドや四つ脚のついた陶器のバスタブ、レースやシルクのナイトウェア
といった美しいシチュエーションが、耽美…というか、ハーレクインなのだろうな。ハーレクイン
はほとんど読んだことがないのでその定義がよく分からないのだが(汗)。

両性具有という異形の身体を嫌悪するイリスが、クラーク・ダリによってゆっくりと自分の性を
受け入れていく。その過程が、妙に健気なのだ
「男性」として必死に生きてきたイリスにとって、自分の中の「女性」を忌まわしいものでしか
ない。自分自身の性すら受け入れられないイリスには、性的な行為は恐怖でしかない。
だが、それを強要された身体は悦楽に惑乱し、イリスは頑なな心と、悦楽に溺れる身体との
間で戸惑い、恐れる。イリスが受ける衝撃や怯え、そして決して認めたくない甘やかな心の
震えが伝わってくる。やがてイリスは、クラークを受け入れ、「愛されている」自分自身をも受
け入れていく――愛は偉大だ(笑)。

互いが言葉足らずだったり不器用さゆえ、誤解が誤解を招いてしまうあたり、もどかしいのだ
が、そこがミステアスな雰囲気を醸しているように思う。現在では両性具有で生まれた場合、
手術によって性を定められるし、他にも気になることもあるのだけど、それは読み終わって、
頭が冷静になってからのこと(笑)。ぐいぐい物語世界に引き込んでいくあたりは、さすがだ。
(山藍さんにしては)ハードな行為はないが、うっとりとエロティズムに酔える。

2000年11月に『虹の麗人―イリス』 としてバニラ新書(コアマガジン)から、安曇もかさんのイ
ラストに変更して再販されている。リニューアル版の安曇もかさんの絵は玲瓏な美女で、前の
春日聖生さんのイリスは可憐なイメージ。私の中ではすでに春日聖生さんのイラストでインプッ
トされているのだけど、イラストの印象でその性格も全く違って見えるのが面白い。

補足:2006年、宙出版より「イリス-虹の麗人」再販。


関連記事

テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

22:37  |  山藍紫姫子  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2004.08.09 (Mon)

「花鬼」山藍紫姫子

「お前は、いくつ、わたしを裏切っているのだ?」


能楽界最大流派・観月流を襲ぐ美貌の能楽師・観月鏡花。
艶かしくも美しい彼を求めて、嫉妬と欲望渦巻く男たちの狂宴が始まる―。
甘美な官能の世界を描いた禁断の愛の物語。(本書帯より)

4048735039花鬼
山藍 紫姫子
角川書店 2003-12

by G-Tools


『花夜叉』の続編だが、これ1冊でも読める。能楽の流派をつぐ美貌の能楽師――それだけでも想像がつくだろうが、バリバリ耽美である。SM度も高いが、あくまで美しく表現できるのはさすが山藍氏。
硬質な美貌の鏡花が、強要された屈辱的な享楽であるにかかわらず、開発された肉体の方は快感をむさぼってしまう。その奥底から彼の深い哀しみが漂ってくる。
彼の美しさ・儚さに魅せられる者たちに翻弄される鏡花。だが鏡花は周囲に流されているようで、実は周囲が踊らされているのだ。そんなたおやかな鏡花の下克上ぶりに魅せられる。
鏡花のための裏方に徹し、計算高く観世流を操る鏡花「命」の世話役・真木の胡散臭さにも味がある。希望を言えば、もっとあざとく暗躍させて欲しかった(笑)。
そして何よりも挿画の小林智美さんにびっくり。なんでも出版社から修正が入ったとか。同人誌以外でこんな官能的な小林のイラストを見たのは初めてじゃないかな。


関連記事
■ 作者紹介
■ 長恨歌
■ 金環蝕
■ スタンレー・ホークの事件簿(シリーズ)
■ 闇を継承する者日影成璽(シリーズ)
■ 花鬼
■ 王朝恋闇秘譚
■ 完全版 虹の麗人―『イリス・虹の麗人』
■ アレキサンドライト

テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

23:53  |  山藍紫姫子  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
 | BLOGTOP |  NEXT
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。