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2008.07.17 (Thu)

「黒羽と鵙目」 花郎藤子

「いつだって本気に変えてかまわねぇんだぜ…?」 by黒羽



初版は1996年花丸ノベルズ……もう12年も経つんだなー。何気にショック。
しがないバーテンダー鵙目隆之は、拉致同然に連れ込まれたマンションの一室で、
黒羽組の組長、黒羽斉彬と再会する。
それは16年前の天山少年院で繰り返された陵辱の再開でもあった。
抗いながらも、黒羽の魅力に惹かれていく自分を、鵙目は認めまいとするのだが――。

鵙目の姉に対する思慕、因縁の仲である前田、鵙目と前田の関係を疑う黒羽斉彬との
奇妙な三角関係を中心に、鵙目を慕う落ちこぼれのマサルや鳩子たちを巻き込み、
また巻き込まれながら、物語は現在も進行中。

4592850262 黒羽と鵙目 1 (花丸文庫BLACK)
 花郎 藤子
 白泉社 2008-06-19



花郎藤子氏自身による『禽獣の系譜』の二次小説(パロディ)であるが、
共通しているのは黒羽が極道であることくらいか。
とはいえ、『黒羽と鵙目』の方も切なかったりするが、ライトに書かれているから読みやすい。
こっちの黒羽は(こと、鵙目に関して)オバカで可愛い。いや、私はいらないけど(爆)。

尚、黒羽、鵙目とも上記作品と名前、性格設定なども異なり、
二次小説とはいえ作品として独立している。

性格の相違が楽しいので、以下で人物紹介をさせていただく。
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16:57  |  花郎藤子  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2003.02.12 (Wed)

「恐怖の男たち」 花郎藤子

1992年8月/発行 白泉社 1997年/花丸文庫(白泉社)

――俺にはあんたしかいないんだ……


内容
アフガンから欧州、そして氷の荒野へと舞台を移しながら、故郷も過去も肉体も、精神すら男
に捧げることを選んだ青年と、血と泥濘の中を這いずりつつも己れの生き方に妥協せぬ傭兵
たちを描いた大作。

額に嵌め込まれたラピス・ラズリ、銀の美貌をもつ青年 アッシュと、血に濡れた虎のようなイライジャ――彼らは「恐怖の男たち(レ・ザフルー)」と呼ばれる傭兵だった。
傍系王族の叛逆により家族を失い、ひとり逃亡を続るパルミラ王国の王太子・焼蘭(シャオラン)が、アッシュの過去だ。アッシュは己れの内にすべてを葬り、イライジャの傍らで、死と硝煙の匂いの中に生きることを選ぶ。

だがアッシュは、CIAやKGBの国家的謀略に巻き込まれ、さらに母国の刺客からも、執拗に追跡されていた。捨てたはずの過去が彼を追い詰めてゆく。
刺客たちの襲撃の混乱の中で、CIAに拉致されたアッシュ。救出に向かったイライジャと女傭兵ライラが救出に向かった目前で、刺客によって彼が監禁された屋敷が爆破される。

アッシュの死を確信したイライジャたちだったが、瀕死の中で彼は生きていた。心身の傷の癒えぬままに、彼はイライジャと行動を共にすることを望む。
イライジャはベトナム時代の戦友・トウキョウ・ジョーと手を組み英国海軍提督をソ連へ亡命させる仕事を引き受ける。だが、ジョーの本当の任務は別のところにあった。
アッシュの裏切りで、イライジャは瀕死を負う。そして、イライジャを死に追いやったと思い込んだアッシュは自閉状態となってしまう。

生き人形となったアッシュの世話をやき、再び生へと目覚めさせたのも、死の淵から生還したイライジャだった。
裏切ったあげく、足手まといとなった自分はイライジャに捨てられてしまうかもしれない――アッシュは恐れ、苦悩する。
やがて、十年前、アッシュが自らの手で生命を奪った妹・衍華(イェンホワ)の生存を知り、イライジャは、望まぬ再会を拒絶しきれぬアッシュとアメリカへ乗り込む。再会した衍華の眼はアッシュに対し憎しみの色しか見せなかった。
一方、ライラもまたパルミラ王国の依頼を受け、暗躍していた。
東西大国の国家的謀略と欲望が渦を巻く中、彼らはそれぞれ己れの生き方を貫いていく。


書評
通称「レ・ザフルー」/1984年から同人誌で書き継がれ1987年完結、後に商業誌化。
花郎藤子ファンの間では、バイブルともいわれ、私を花郎ファンに引き込んだ作品でもある。
作家のデビュー作にはすべてが詰まっているといわれる。この作品にはまさに全て(に近いもの)が詰まっている。ハードボイルドな愛を描き、擬似家族的アプローチあり、特異な人物造型あり、哲学的思索まで垣間見えるような気がする。

主たるテーマはやっぱり「愛」だ。愛といってもそんじょそこらのBLとはわけが違う。擬似親子愛、擬似家族愛、ライバルへの愛、切ない愛、およそ一筋縄ではいかない愛ばかりなのだ。
どいつもこいつも不器用で、矜持は果てしなく高いから、感情をストレートに表現できない。
そのキャラクターたちも魅力的だ。登場人物誰ひとりを取っても、一癖も二癖もありそうなヤツばかり。
アッシュはもちろん、イライジャといい、たくましい女傭兵ライラといい、気のいいフィリップといい、孤独と痛みを抱えつつも己れのいる場所をしっかり見据えている。この連中を生き生きと描き分ける花郎氏の筆のさえは目を見張るものがある。

アッシュは謎の少数民族国家の王太子という、ハーレクイン的設定で描かれている。花郎氏自身が目指したのも「ハーレクイン男性版」だそうだが、それにしては凄惨ではある(笑)。
花郎氏の登場人物たちの系譜から言えば、アッシュは、拠り所のない、アイデンティティを持たない人物として捕らえた方が的確だろう。いわゆる「境界上」に立つ人物といったらいいだろう。

過去は既にあの森の墓穴に底深く埋めた筈だった。今の彼は、名実共にただの人間、ただの傭兵――アッシュだった。
それも、過去を捨て新たに生まれ変わった幻ではなく、逃れ難い業火に焼き尽くされた、一握りのアッシュ――灰――だった。


アッシュの中には何もない。「この世に人間を引き留めるすべて」を、彼は捨てている。
からっぽの彼の、そこに染み込んできたのがイライジャだった。それゆえ、アッシュにとってイライジャの存在そのものが「生きること」のすべてとなり、そのいじらしいほどの純情はそら恐ろしいほどだ。
葬ったはずの過去は、だが、アッシュに食らいついている。
彼を守るために傭兵たちは戦ってゆくのだが、そこは馴れ合いを嫌う一匹狼の彼らのこと、一筋縄でいくわけがない(笑)。

アッシュに「生」の喜びを目覚めさせる一つの手段として、イライジャはアッシュに性の悦楽を与える。それはかならずしも成功しているともいえないし、端からイライジャの行為は「愛」ゆえではない。アッシュにしてみれば、イライジャとの交歓よりも、好きなオレンジを一つ、彼の手からもらった方が数倍も幸せだったりする。そのあたりが花郎氏なんだよね(笑)。
それはライラとの関係にも言える。イライジャとライラの関係はアッシュを核とすることで、擬似家族的な関係にある。だが2人の過去ゆえに緊張感がつきまとう。けっして甘くならない。その橋渡しをするための微妙な位置にいるのがフィリップといったところだろうか。
直接的にはイライジャのカリスマ性は描かれてはいない。矜持の高い一匹狼的存在そのものがイライジャという男だ。

個人的には、女傭兵ライラがお気に入り。もちろん腕力が強いからではなく、彼女の生き方のたくましさが好き。女であることを利用こそすれ、それに甘えない。自分を見失わぬ強さ、したたかな生き様は、女の理想だろう(私だけ?)。その彼女もアッシュにだけにはちょっと弱い。そんな弱さもまた、彼女の人間味を加味している。
途中に大きな地雷がいくつも仕掛けられ、読む者の目を釘付けにせずには置かない。間違いなく良質なハードボイルドなJUNEに仕上がっているはず。

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18:53  |  花郎藤子  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2002.07.01 (Mon)

花郎藤子「禽獣の系譜」

「俺より、独りがいいのか……?」


内容
初版は1992年白泉社ハードカバー/のちに花丸ノベルズで再版。
極道JUNEという特殊な男世界を描いた作品である。
北日本を支配する木賊(とくさ)組の組長の一人息子 木賊烈は、おとなしく、暴力を嫌う17歳の少年だ。組の後継者として期待する父と、気弱さゆえにますます萎縮してしまう烈。それゆえ烈は孤独だった。
だが突然の父の死によって、跡目をめぐる義母との確執や内部抗争が起こる。重責に潰されそうな烈の支えとなるのが、烈が思慕を抱く組の若頭 黒羽周次の存在だった。

内部抗争は苛烈さを増して幹部の多くが狂刃に倒れ、黒羽もまた組を追われそうになる。
黒羽が不在の間に組員の平山の邪まな欲望にさらされ、烈は、黒羽への思慕が同性を肉体的に求める感情だと思い知らされる。
なすすべもなく蹂躙される烈の前に、ある決意のもとに黒羽が現れる。実は黒羽は、日本の統合を目指す広域暴力団 天堂会から送り込まれていた人間だったのだ。
その傘下に組み込まれることで木賊組は事実上崩壊し、烈は極道社会のしがらみから解放されたはずだった。
だが寂しさに突き動かされるように黒羽を頼って東京へ向かう。

(以下、[内容]ネタバレなので【Read More・・・】へ)


書評
私は花郎藤子氏のファンである。だがこの小説を読んだのは遅かった。
なぜなら極道にロマンを求めていないし、感じたくなかったのだ。
私の知る極道とは、鶴田浩二とか高倉健、菅原文太さんが演じたやくざ映画の世界だし、
映画館から出てきた男はつい肩をイカらせて歩きたくなってしまうらしい、という世界に
過ぎないからである。
でも読んでみたら極道にロマンを感じたばかりでなく、泣けちゃったんだな、これが。

3章からなるこの作品は、いかにも花郎氏らしい、すみずみまでピシッとはりつめた無駄のない
文章で、端正な作品になっている。

極道というある種の閉鎖空間で、彼らが人間存在の哀しさ、生きることの寂しさ
(なんていうと安っぽいセンチメンタリズムに聞こえるかもしれないけど)を
とことん身体をはって追求し、かみしめ「男」という看板に孤独な仲間意識を見出す。
それは寄り集った「家族」なのである。
閉鎖された時間と空間の中で、たまたまよろめくように人間同士が縺れ合ったり、
親子になったり、死んでいったり、という男の生き様の哀れというか、目出度さというか、
賑わいというか、それらの描写はJUNEの枠に収まりきらないのではないだろうか。

物心ついた頃から孤独だった烈は、男に恋した自分にコンプレックスを抱きながら黒羽を求め
続けるのだけれど、孤独感は人肌を恋しがらせる。行きずりの男たちの性交渉、己の痴態を
嫌悪しつつも黒羽を求めてしまう飢餓感、さらに靫正とのSEXなど、人肌の恋しさゆえの行為に
思える。

そして烈は呟く。
黒羽にあるのは「ひとりぼっちの子供を見棄てられなかった」慈愛のようなものだろうと。
そうとしか思えない烈の心情は悲哀というか、もの哀しい。
それでも黒羽を愛することで烈は救われるのだ。
その、もの哀しい愛を、氏は極道という背景や都会の雑踏の中に書き込んでいく。
それは歌舞伎町や渋谷だったり、覗き部屋だったり、尚の安アパートだったりするのだけど、
それらがいちいちピタッと人物たちと合っている。

最終章の「龍の系譜」では、烈の愛は昇華してしまっているように思う。
心はすでに黒羽とともに彼岸に渡ってしまっており、失った存在を悲しみながらも、
結果としては愛したことに充足している烈がいる。

ところで黒羽周次という男は、それこそ着流しの鶴田浩二さんが演じた一昔前の任侠道を
地で行くような男で、ストイックな中に熱い滾りを垣間見せるお方である。
因みにナンバー2に弱い私は、ここでも黒羽の右腕的存在 鵙目氏のファン。

当然(かどうかは分からないが)黒羽の周囲には「男心に男が惚れた」とか
「あんたのためなら命も捨てる」という極道の男たちが集まってくる。
こういう心理って男独特のもので、もしや男という生き物の中には多かれ少なかれホモ因子が
潜んでいるらしいと、女の看板をしょっている私はつい薄ら笑いを浮かべてしまう。
たぶん根源的なところでは、女には理解できないのだろうと思うのだ、悔しいけど。
ま、一方ではこういう世界にホロッとしていちゃイカンなと思いつつ、
しかし、やっぱりしんみり泣かされてしまう小説なのでありました。

kinjyu0a.jpg





 『禽獣の系譜』禽獣の系譜
 花郎藤子
 白泉社 (1992/12)


[内容ネタバレ続き] 入手困難本なので思いっきりバラしています。

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17:22  |  花郎藤子  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2002.07.01 (Mon)

花郎藤子(はないらつ ふじこ)

同人界で熱心なファンを持つも、意外にも商業誌デビューは1992年と遅い。
1984年~1987年に同人誌で発表され、その集大成ともいえる「恐怖の男たち」(通称レ・ザフルー)で
デビュー。
戦場を渡り歩く傭兵たちをハードに壮大なスケールで描き出した作品はJUNEという分野に可能性を
広げたのではないだろうか。

作品に共通して、その底辺には人間の孤独感が流れている。
そして、たとえ相手に求められなくても、自らの意思をもって誰かを愛することで孤独は救われる。
それ故「愛」イコールSEXとはならないあたり、「愛されたい症候群」が蔓延するBL小説とは
一線を画している。
ハードボイルドな世界は氏の独壇場であるが、ライトな学園物ではコミカルに楽しませてくれる。

代表作は「恐怖の男たち」「ヴィヴィアン」「黒羽と鵙目」など。

 黒羽と鵙目
 禽獣の系譜
 恐怖の男たち
 カンナギ様式

>website【花郎藤子のページ】

*この記事は website【CAFE唯我独尊】から移行したものです。

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