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2002.12.06 (Fri)

柏枝真郷 「硝子の街にて」シリーズ

「おれは、とんでもないガキに惚れちまったらしい」



シリーズ書評
ミステリとしての味わいもさることながら、旅行会社でバイトをする伸行(ノブ)と、その幼馴染みで
あり、NY市警察本部殺人課警部補シドニーの関係が少しずつ変化していく過程が丁寧に描かれ、
純愛小説としても楽しめる。

柏枝作品らしく、それぞれの犯罪には哀しい動機が秘められている。
一般的に「人は何度でもやり直しができる」といわれるが、世の中には、どうしても償いようのない
過ちや、癒されたようにみえても積もってゆくだけの痛みがある。ほんのボタンの掛け違えとも
いえる齟齬から引き起こされてしまう事件は、人間の業が滲んだ切なさがある。
少しずつ事件関係者の内面を覗き、自分の人生を見つめ直しながら、その哀しい心理にシンクロして
しまうことで、ノブは犯人に行き当たる。

ティーンズ・ノヴェルということもあって『DESPERADO』シリーズに比べるとライトで、空間の中に
流れている風の感触というか、乾いた空間感覚で重く沈鬱になりがちなテーマも読みやすい。
また、ゲイの描き方も、ティーンズ・ノヴェルにありがちなモラトリアムな関係ではなく、NYという
社会背景を下敷きにマイノリティな部分もさり気なく描かれており、好感が持てる。
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テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

19:26  |  柏枝真郷  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2002.10.25 (Fri)

柏枝真郷 「DESPERADO」シリーズ

「……ああ……あんただ……」


シリーズ作品を書き出してみて気づいたのだが、このシリーズとのお付き合いは10年にもなって
いた。カバーをかけてあるが、何度も読み返したため、本の閉じしろの糸が緩んでしまった巻もある。
それでも未だに新作を楽しみにしている。
キャラクターが魅力的であり、心理描写が丁寧に描かれていること。そして深みや広がりを次第に
見せていく巧みなストーリー展開に、ついつい引き込まれてしまうのだ。

シリーズ書評
デスとあだ名される元刑事のさえない私立探偵クラークと、黒髪と緑の瞳の美貌の青年アンソニー
(トニー)のふたりが、イーストリバー市という架空都市の谷間に生きる人々の哀歓と、そこに展開
される数々の事件の真相を追求してゆくミステリ小説(というよりハードボイルドかな)。

ボタンをひとつ掛け違えたための悲劇というのだろうか。そこから事件は起こる。
その根底にあるのは愛だ。それがどんなに歪んだ愛情でも。
柏枝氏の描く人間はみんな傷を負っている。愛に飢え、痛みに耐えかねて事件を起こしてしまう
哀しい人間ばかりである。
そしてまた事件を追う人間も、心に深い傷を負ってる。
しがない探偵デス(クラーク)も、貧しさゆえ生きる為に男娼をしていた過去を持つトニーも、
そしてゲイバーの女(男)たちや、罪を犯してしまう人間も、深い深い傷を負っている。

     生きていくことは辛いこと――それでも懸命に生きていく。
     いつかは幸せになれるのかもしれないから。

彼らは互いの傷や重い過去を抱えながらも、懸命生きていこうとしている。
そして様々な哀しい事件を解決していきながら、デスとトニーの関係もすこしずつ変わっていく。
いつか別れる時がくる――どこか刹那的だったトニーも、やがて2人の未来を考え、大学に通い
始めるなど、前向きに歩き出す。
それに比べると、物語がデスの視点で書かれており、また彼が大人である分、内相的かもしれない。
1度は社会からドロップアウトしてしまったデスは、事件の度に彼は自分の過去と向かい合い、
傷ついている。暗い男である。だが、

「トニーがオカマなら、俺もオカマだ。さあ、俺をオカマだと言ってみろ」

なんて言いきれちゃう男気のある奴なのだ。

事件が解決しても、ハッピーエンドとは限らない。
むしろ真実が曝されることで傷つき、苦悩することになるような、ほろ苦い結末へと導かれる。

この小説の主要な登場人物には悪人はいない。いるのは、誠実に懸命に生きている普通の
人間たちだ。このシリーズの魅力は、そんな作中人物に対する慈愛に満ちた作者の視線にある。

深い闇に触れてしまうにもかかわらず、それでも読後感には救いがある。
ほんのりと心が温まり、癒されている自分に気づくのである。
大人の恋愛物がお好きな方にお薦めの極上のJUNEである。


【DESPERADOシリーズ全作品】

テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

09:00  |  柏枝真郷  |  TB(1)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2002.10.24 (Thu)

柏枝真郷

【作者略歴】

雑誌JUNE「小説道場」に投稿。道場主 中島梓氏の門弟となる。
道場主評によると結構問題児だったらしい(笑)。ミステリやハードボイルドな作品が多い。
1991年、光風社出版より『時が過ぎゆきても』(DESPERADOシリーズ)でデビュー。
以来追っかけをしているが、ボーイズラブ系の作品が量産される中、JUNEという特別な響きの
余韻にじんわりと浸ることができる作品が多く、嬉しい…♪

作品は一言で言うと、重い。コミカルな作品にも根底に人間の哀しさがある。
人間のダークサイドな部分の心情を透徹な筆致で描いているが、感傷に流されず、不思議と乾いた
感じがする。

代表作に『DESPERADO』シリーズ、『硝子の街にて』シリーズなど。

テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

22:06  |  柏枝真郷  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
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