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2009.04.27 (Mon)

「明日も愛してる」安芸まくら

「…おやすみ、櫂。また明日な…」


読了したのは去年のことなのだけど、皮膚の表面がざわつくような、
読後感がなんだか定まらなくて保留していた作品。
今回じっくり再読して、あらためて泣けました。

4883863549明日も愛してる (Holly NOVELS)
深井 結己
蒼竜社 2008-08-04

by G-Tools


朝、櫂は知らない部屋のベッドで目が覚めた。ついさっき、眠りにつくまで櫂は十八歳だった。しかし窓に映る自分の姿は、どう見ても高校生には見えないほどくたびれていた。「現在のおまえの年齢は35歳」…枕元に置かれたファイルにはそう書かれていた。戸惑う櫂の前に現れたのは、ツダと名乗る見知らぬ男だった。男に自分の「ハウスキーパー」だと告げられた櫂は驚くが…。―永遠に繰り返されるせつなく甘い愛の物語。


記憶から消されてしまうことは、存在の喪失だという。
恋人であったことさえ忘れられ、日に何度も存在をリセットされ続けているということは、
その度に自身の存在を否定され、あるいは小さな死を与えられるようなものだ。
それでも津田は櫂の側に居続けている。
少しずつ記憶を保つ時間が短くなっていく櫂を、津田はどんな思いで見つめたのか。

恋人に対して津田は日に何十回も自己紹介をしなければならない。
そんな日々を、彼は何年も続けてきたのだ。
永遠に足元が定まらないもどかしさに苦悩する櫂を支えながら、
どれほどの苦しみに津田は突き落とされ続けたのだろう。
恋人同士としての甘やかな記憶も、共に過ごしたであろう共通の時間や体験もなくし、
日々忘却されるだけの残酷。

しかし、これは優しいラブストーリーでもある。
毎日、何度でも二人は恋におちる。
消えゆく記憶の深奥には、確かに恋する心がもどかしくも垣間見える。
付き合って九年、と津田は言った。事故がおきたのが五年前だから、
既に事故った後の櫂との付き合いのほうが長いことになる。
事象は積み重ねられていくが、ストーリーが櫂の視点で進行するため、
真実は最後まではっきりと明かされない。だが、描かれぬゆえにしっとりと心に余韻が落ちる。

ラスト近く、櫂が自分の記憶の部屋を探索し、一瞬だけ事故前の自分に戻り、
ほんの僅かの時間、津田と会話するシーンがなんとも切なくて印象的。

実は「記憶を保てない男」のストーリーということで、
『博士の愛した数式』を連想して身構えていたのだが、
恋愛小説としてはよくまとまっているのではないだろうか。

最後の津田の言葉、
「…おやすみ、櫂。また明日な…」
いきなり泣けてしまった…。
残酷で優しいラブストーリーだ。





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テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

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