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2002.07.01 (Mon)

花郎藤子「禽獣の系譜」

「俺より、独りがいいのか……?」


内容
初版は1992年白泉社ハードカバー/のちに花丸ノベルズで再版。
極道JUNEという特殊な男世界を描いた作品である。
北日本を支配する木賊(とくさ)組の組長の一人息子 木賊烈は、おとなしく、暴力を嫌う17歳の少年だ。組の後継者として期待する父と、気弱さゆえにますます萎縮してしまう烈。それゆえ烈は孤独だった。
だが突然の父の死によって、跡目をめぐる義母との確執や内部抗争が起こる。重責に潰されそうな烈の支えとなるのが、烈が思慕を抱く組の若頭 黒羽周次の存在だった。

内部抗争は苛烈さを増して幹部の多くが狂刃に倒れ、黒羽もまた組を追われそうになる。
黒羽が不在の間に組員の平山の邪まな欲望にさらされ、烈は、黒羽への思慕が同性を肉体的に求める感情だと思い知らされる。
なすすべもなく蹂躙される烈の前に、ある決意のもとに黒羽が現れる。実は黒羽は、日本の統合を目指す広域暴力団 天堂会から送り込まれていた人間だったのだ。
その傘下に組み込まれることで木賊組は事実上崩壊し、烈は極道社会のしがらみから解放されたはずだった。
だが寂しさに突き動かされるように黒羽を頼って東京へ向かう。

(以下、[内容]ネタバレなので【Read More・・・】へ)


書評
私は花郎藤子氏のファンである。だがこの小説を読んだのは遅かった。
なぜなら極道にロマンを求めていないし、感じたくなかったのだ。
私の知る極道とは、鶴田浩二とか高倉健、菅原文太さんが演じたやくざ映画の世界だし、
映画館から出てきた男はつい肩をイカらせて歩きたくなってしまうらしい、という世界に
過ぎないからである。
でも読んでみたら極道にロマンを感じたばかりでなく、泣けちゃったんだな、これが。

3章からなるこの作品は、いかにも花郎氏らしい、すみずみまでピシッとはりつめた無駄のない
文章で、端正な作品になっている。

極道というある種の閉鎖空間で、彼らが人間存在の哀しさ、生きることの寂しさ
(なんていうと安っぽいセンチメンタリズムに聞こえるかもしれないけど)を
とことん身体をはって追求し、かみしめ「男」という看板に孤独な仲間意識を見出す。
それは寄り集った「家族」なのである。
閉鎖された時間と空間の中で、たまたまよろめくように人間同士が縺れ合ったり、
親子になったり、死んでいったり、という男の生き様の哀れというか、目出度さというか、
賑わいというか、それらの描写はJUNEの枠に収まりきらないのではないだろうか。

物心ついた頃から孤独だった烈は、男に恋した自分にコンプレックスを抱きながら黒羽を求め
続けるのだけれど、孤独感は人肌を恋しがらせる。行きずりの男たちの性交渉、己の痴態を
嫌悪しつつも黒羽を求めてしまう飢餓感、さらに靫正とのSEXなど、人肌の恋しさゆえの行為に
思える。

そして烈は呟く。
黒羽にあるのは「ひとりぼっちの子供を見棄てられなかった」慈愛のようなものだろうと。
そうとしか思えない烈の心情は悲哀というか、もの哀しい。
それでも黒羽を愛することで烈は救われるのだ。
その、もの哀しい愛を、氏は極道という背景や都会の雑踏の中に書き込んでいく。
それは歌舞伎町や渋谷だったり、覗き部屋だったり、尚の安アパートだったりするのだけど、
それらがいちいちピタッと人物たちと合っている。

最終章の「龍の系譜」では、烈の愛は昇華してしまっているように思う。
心はすでに黒羽とともに彼岸に渡ってしまっており、失った存在を悲しみながらも、
結果としては愛したことに充足している烈がいる。

ところで黒羽周次という男は、それこそ着流しの鶴田浩二さんが演じた一昔前の任侠道を
地で行くような男で、ストイックな中に熱い滾りを垣間見せるお方である。
因みにナンバー2に弱い私は、ここでも黒羽の右腕的存在 鵙目氏のファン。

当然(かどうかは分からないが)黒羽の周囲には「男心に男が惚れた」とか
「あんたのためなら命も捨てる」という極道の男たちが集まってくる。
こういう心理って男独特のもので、もしや男という生き物の中には多かれ少なかれホモ因子が
潜んでいるらしいと、女の看板をしょっている私はつい薄ら笑いを浮かべてしまう。
たぶん根源的なところでは、女には理解できないのだろうと思うのだ、悔しいけど。
ま、一方ではこういう世界にホロッとしていちゃイカンなと思いつつ、
しかし、やっぱりしんみり泣かされてしまう小説なのでありました。

kinjyu0a.jpg





 『禽獣の系譜』禽獣の系譜
 花郎藤子
 白泉社 (1992/12)


[内容ネタバレ続き] 入手困難本なので思いっきりバラしています。
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17:22  |  花郎藤子  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2002.07.01 (Mon)

花郎藤子(はないらつ ふじこ)

同人界で熱心なファンを持つも、意外にも商業誌デビューは1992年と遅い。
1984年~1987年に同人誌で発表され、その集大成ともいえる「恐怖の男たち」(通称レ・ザフルー)で
デビュー。
戦場を渡り歩く傭兵たちをハードに壮大なスケールで描き出した作品はJUNEという分野に可能性を
広げたのではないだろうか。

作品に共通して、その底辺には人間の孤独感が流れている。
そして、たとえ相手に求められなくても、自らの意思をもって誰かを愛することで孤独は救われる。
それ故「愛」イコールSEXとはならないあたり、「愛されたい症候群」が蔓延するBL小説とは
一線を画している。
ハードボイルドな世界は氏の独壇場であるが、ライトな学園物ではコミカルに楽しませてくれる。

代表作は「恐怖の男たち」「ヴィヴィアン」「黒羽と鵙目」など。

 黒羽と鵙目
 禽獣の系譜
 恐怖の男たち
 カンナギ様式

>website【花郎藤子のページ】

*この記事は website【CAFE唯我独尊】から移行したものです。

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