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2002.11.25 (Mon)

「白狼綺伝Ⅴ―獣神たちの夏」斎城昌美

北方のアマラン軍はダルナディート国境で帝国軍を相手に苦戦を強いられていた。アシュラウルはベノウィックにのみ真実を告げ、ダリュワーズとの一騎打ちを狙い国境へと向かう――クウィル・ヴォル神に送らせちゃうところがすごい(笑)。神様をアッシーにしてしまっているのだ。
だがこの決闘でアシュラウルは右腕を切り落とされ、ダリュワーズも瀕死の重傷を負う。
ダュワーズは妖魔バシュマハドに助けられ、アシュラウルはクウィル・ヴォル神によって腕を繋がれるのだが、その痛手は深く引きずることになる。

くすぶる部族間の確執、暗躍する魔術士の謀略など、アシュラウルは苦悩する。彼は決して万能ではない。
北方のカイムジェサ帝国に数で大きく劣るアシュラウル軍は多くの犠牲を強いられながらも、帝国の領土を削り取り、人々を解放してゆく。
天空ではクウィル・ヴォル神と妖魔バシュマハドとの戦いが繰り広げられ、ついには竜族の王キゼラドを仲立ちに帝国との和睦を結ぶことに成功する。
ここにアシュラウルを神皇帝とする「神聖連合王国」が誕生するのである。ついでにしっかり領土を横取りする老竜キゼラドが老獪なくせに、とてもチャーミング♪ 

謀略、嫉妬、裏切り、繰り返される生と死――重いテーマだ。だが、他者に犠牲を強いてまで守る信念に価値があるのだろうかとか、志半ばで逝かねばならぬ者の思い、残される者の苦しみ悲しみを見つめるとき、使い古された言葉ではあるけれど、命より大切なものがあるのだろうかと思う。そして、平和とは所詮、永遠の途上なのだと、一抹の虚しさが過ぎるのでした。

「軍事と謀略」の戦記物ではあるのだけど、剣と魔法とドラゴンのファンタジーの三種の神器もしっかり出てくるから、これもファンタジーには違いない(笑)。

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テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 本・雑誌

00:38  |  斎城昌美  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2002.11.25 (Mon)

「白狼綺伝Ⅳ―狼の黒い旗」斎城昌美

アシュラウルとベノウィック、ダナスターン、イキュエの一行は海を渡り、カイムジェサ帝国内にあるものの支配の届いていない深い谷へと足を踏み入れる。アシュラウルは、クウィル・ヴォル神によって造営された青耀宮(イレウィス・ダラーム)を拠点とし、「精霊王」として今も帝国と戦い続ける周辺の遊牧の民を統合し、挙兵の準備を始める。それはベノウィックたちとも一線を引くことでもあり、半神半人としてのアシュラウルの孤独を深めることでもあった。

一方ダリュワーズはアマラン侵攻のため、北方へ向けて進軍を始める。帝国軍の主力が北方に向かっている隙を突いて、アシュラウルは南から攻め上がる戦略をとる。
偵察に訪れたイピリ砦で、帝国の魔術士によって多くの民草が無造作に犠牲とされる様子を目撃したアシュラウルは、怒りに任せて非力な妖魔を滅ぼし、衝動的で無慈悲な自らの「神としての魂」に愕然とする。だが戦いは止めようもなく、アシュラウルは、圧倒的に数で優るイピリ軍を冷徹な戦術で分断し、軍を完勝に導く。
鮮やかな勝利ではあったが、部族間の対立あり、帝国側の間諜の暗躍ありと、様々な問題を孕んでの勝利でもあった。

この巻より「剣と魔法」というより、戦略戦術を駆使する「軍事と謀略」によるファンタジーへと、一気に軍事色が強くなる。部族間の確執から統合されていく過程が丁寧に書き分けられており、斉城氏の揺るぎない筆力に圧倒される。
異なる部族的性格、慣習の相違は簡単に乗り越えられるものでなく、これからのアシュラウル様の苦労が思いやられるが、それにもましてご苦労なのは繊細で気配りの人、ベノウィックではなかろうか。彼なくして部族の決起は難しかったと思う。
そんな人がアフガニスタンにもいればいいんだけど・・・・・・今回revieのための再読をしていて、ふと現実と重ねてしまったのだった。

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00:35  |  斎城昌美  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2002.11.25 (Mon)

「白狼綺伝Ⅲ―獅子王の毒」斎城昌美

「獅子王の毒」とは、侵略を容易にするために内乱を画策する獅子王ダリャワーズの陰謀を指す。これを打ち破るべく、華やかな宮廷を舞台にアシュラウルたちが、結構あざとい手を使いつつ活躍するのだが、特筆すべきは「すけこまし」なアシュラウルに恋する青年マウリシスとのエピソードである(笑)。

恋に対して純情な彼は、はかなげな雰囲気(を演出する)アシュラウルに一目惚れしてしまう。謀反の主犯である人物に接近する策略を秘めつつも、その心情にほだされてアシュラウルは八日間だけの恋人となるのだが、後に彼は非情な選択を迫られ、命をもかけることとなるのだ。純情な恋をもてあそんだ罰であろう。

またクウィル・ヴォル神も、バシュマハドの情報をもたらしたり、アシュラウル自らが帝国の罠にはまることで悪人を炙り出し、あわやとなった彼を救出したりとご活躍なさるのだが――アシュラウルに恋を迫るマウリシスに嫉妬したり、ついでに神の力を見せつけてみたりと、おちゃめな面を垣間見せる(いや、ご本人はそのつもりではないだろうが)。
そんなクウィル・ヴォル神の恋情を、実は冷静に計算して計画をたてるあたり、運命に弄ばれているはずのアシュラウルが1番人が悪いのかもしれない。
そしてアシュラウルは、帝国と戦い獅子王と直接対決するために、カイムジェサ帝国に乗り込むことになるのである――。いよいよ次巻から戦神アシュラウルの本領発揮!

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00:33  |  斎城昌美  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2002.11.25 (Mon)

「白狼綺伝Ⅱ―精霊王の琵琶」斎城昌美

ニーヴァンから夜逃げし、気儘な旅を続けるアシュラウル一行は、足を痛めた旅人イキュエを助ける。彼は故郷の救済を求めて、ニーヴァンを救ったという精霊王を探していたのだ。
アシュラウルはイキュエに真実を告げぬまま、共に旅を続けることになる。
だが、ダナスターンとイキュエは最初から敵愾心を隠そうともしなかった。それは互いの故国を征服した肌の色に起因していた。ダナスターンの故国を滅亡させた黒い肌の人間と、イキュエの故郷を征服して奴隷と貶めた白い肌の人間――肌の色の違う民族を戦わせるのはカイムジェサ帝国の常套手段でもあるのだ。
目の前の人間を憎悪するしかない2人がやるせない。だが、アシュラウルはかつての敵と手を結べば真実の敵=帝国をも倒せるはずではないかと諭す。気儘な旅は一触即発の険悪な旅となるが、ベノウィックの心配をよそにアシュラウルは中庸の立場を守るのだった。

やがて一行は呪われた都に閉じ込められたという、アマラン王国の第三王子ルシュエスの噂を耳にする。
遠見、予知、読心の力を持ち、カイムジェサ帝国からアマランを守ってきたルシュエスを救出するため、アシュラウルたちが奮闘する。命を懸けた闘いは、完全とまでは言えないまでも、
ダナスターンとイキュエの距離を少しずつ縮めることにもなった。
ルシュエスはアマラン南部の都ダィーラでの謀反を予知しており、それを阻止するためにアシュラウルたちは同道することになる。その道中で立ち寄ったクィラという都で起きたある事件がきっかけとなり、アシュラウルはカイムジェサ帝国の皇帝ダリュワーズと、その帝国の妖術師に力を与えている妖魔バシュマハドを初めて己の敵と認識し、これを打ち倒すことを誓う。

粗筋だけ読むと殺伐とした内容だが、この巻は幾つかの切ない「愛」が描かれていて、じんわりさせられる。閉ざされた都での裏切りに悶え苦しむ「愛憎」。その対極ともいえる互いに心を寄せながら互いの立場を尊重し合い、見つめ続けるだけの「愛」――こういう愛って大人だよなぁ。
さり気なく配された、ちょっとしっとりしたラブストーリーにうっとり・・・としている間に、事態は新たな展開を迎えるのである。金髪碧眼のルシュエス王子が可愛い♪

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00:31  |  斎城昌美  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2002.11.25 (Mon)

「白狼綺伝Ⅰ―魔術士の貌」「」斎城昌美

戦いに倦み、喪失感に打ちひしがれてアシュラウルは海洋を渡った。新たな大陸にたどり着こうというとき、アシュラウルの養い親である神々の王ロア・スタンの弟、叔父神クウィル・ヴォルの宮殿・霧幻宮へと強引に招かれる。
神としてではなく、ただの人間として地上に降り立つと決意したアシュラウルは、半ば従者ベノウィックを人質にとられた格好でクウィル・ヴォル神の情人となることを強要される。その見返りとしてクウィル・ヴォル神が示したのは、アシュラウル自身が望むと望まざるにかかわらず、新大陸での彼の後ろ盾になることとだった。生きようとするを気力すら失ったアシュラウルにとって、圧倒的な神の力を持つクウィル・ヴォルの熱情は飲み込まざるを得ない選択でもあった。
新しい大陸の知識(言語、歴史、生活など)を学びながら霧幻宮でひと冬を過ごし、アシュラウルは、ベノウィックとともに人間界へと降り立つ。
争いのない世界を夢見るアシュラウルだったが、そこには大陸制覇を目論む獅子王・ダリュワーズの統治するカイムジェサ帝国の暗い思惑が蠢いていた。

さてこの2人、学習したとはいえ、いかんせん新大陸では世間知らずである。見目麗しくもあり、うっかりすると男娼宿に売り飛ばされてしまうかもしれない(強いからその心配はないんだが)。そこで与太者に絡まれて困惑する2人を助けたダナスターンと旅の道連れとなる。だがカイムジェサ帝国によって滅ぼされた故国シヴァートの再興を願うダナスターンとの出会いは、アシュラウルを再び戦いの中に身を置かせることでもあった。

気儘な旅のつもりがニーヴァンの皇太子を救ったことがきっかけで、アシュラウルはその手腕を高く買われ、皇太子の臣下となることを求められる。。
ニーヴァンでは内乱が起こっていた。2度と剣を握るまいと決意していたアシュラウルだったが、ダナスターンの心情を察して、内乱収束までとの約束で軍師として参戦する。
ニーヴァンの内乱は魔術師の陰謀だった。さらに影で糸引くのはカイムジェサ帝国だ。次第に、
戦いの深みにはまらざるを得ない状況にアシュラウルは追い込まれてゆく。
だか神が人間界に干渉することは養い親であるロア・スタンの定めた掟に背くことでもある。苦悩しつつも精霊王として、アシュラウルはニーヴァンの内乱を鎮静へと導くのだが――可愛い姫様に結婚を迫られてベノウィックやダナスターンと共に夜逃げするのだった(クスス)。

長命族が主権を握っていた『黒狼秘譚』編よりも、短命族(普通の人間)しかいない大陸が舞台となる『白狼綺伝』では、アシュラウルの半神としての苦悩はさらに深まることになる。ましてや(この時点では)友となるダナスターンにもはっきりと己の正体を打ち明けられない。
自身の秘密を抱えたまま、そしてダナスターンは友に胡散臭さを感じながら命を預けるような付き合いを重ねていかねばならないのだ。これって、互いに結構しんどいことだろう。
大勢の命を奪ったがゆえ、もう二度と戦いに関わるまいとするアシュラウルの困惑や、半神としての苦悩を、決して理解できないとしても、友を理解しようとするダナスターンがかっこいい。私にとって、かくあってほしいと思う男の理想像かもしれない。

ところで、今はなき大陸書房版の『神狼記』はこの巻から始まる。えーと、はっきり申しまして、中公版より大陸版の方がクウィル・ヴォル神とアシュラウルの爛れた関係(笑)がセクシーに描かれています。読み比べてみれば編集部の方針で書き直さざるをえなかったとはいえ、「もったいない」と思うのは私だけではあるまい(爆)。
00:27  |  斎城昌美  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2002.11.11 (Mon)

「殺人音楽」西条公威

「帰りたいんじゃない。……僕は早く産まれたいんだ」


『殺人音楽』収録 1996年 芳文社

【内容】
同人誌で発表されていたスペル・イー・エスのシリーズ商業誌書き下ろし作品。
バイセクシャルでリバーシブルなエスは不完全なものや壊れたものを専門に撮る、自らも壊れたカメラマンだ。アンダーグランドな世界を求めるエスに近づいてくる被写体も、当然ながらどこか尋常でない。

半陰陽のナルとの情事のときに、エスは「殺されたい子供が客を引いている」という噂を聞く。
殺されたい子供――そのフレーズは陰惨な過去を持つエスの深奥に触れた。
その子供とやらを探してたどり着いた廃工場で、エスはルリドとの快楽を買う。
それを商売としているとは思えない、たどたどしいSEX。だがルリドの性癖は、その最中に首を締められることをエクスタシーとする危うい行為だった。犯罪者になりうる綱渡りのような行為にエスもまた、深い悦楽を覚える。
数日後、エスはカモフラージュがわりに連立って来たナルとの情事に耽りながら、男に抱かれるルリドにカメラを向ける。レンズの向こうで繰り広げられるルリドの行為に意識を重ねながら、エスはシャッターを切り続けた。やがてレンズを通してエスは、「殺されたい」ルリドの願いが叶ったことを知るのだった。

【書評】
「殺人」と「音楽」という、見慣れた単語が組み合わされた途端に与える強烈なインパクトにシビレちゃったのが、購入の決め手だった。だがこの作品は、私にとってある意味難解でもあった。
それというのも、たとえば、作品と自分の中にある何かしらの接点、精神的接触があって、感情移入したり共感したり、または嫌悪したりという感情(感想)となるのだと思うのだけど、触れそうで触れられない、掴めそうなのにするりと逃げられてしまうような、何とももどかしいものが私の中にある。
西条作品の、狂気を孕む肉体的蹂躙がやがて精神的支配にいたるまでを描く、いわゆる調教物や、寂しい人間同士が肉体的接触で暖を取り合うような、もの哀しい擬似家族を描いた作品がメジャーだと思われるが、この作品は何とも手触りが異なるのだ。それでいて妙に惹き付ける魅力があって、その謎解をしたいものである……ちょっと弱腰(笑)。

さて、この作品は三人称で書かれているのだが、その視点はエスにある。そして視点に位置するはずのエスが、自身をも第三者的視点まで突き放したところにいることが、ストーリーに独特の浮遊感を与えている。西条氏の後書きに「自己満足で自己完結なシリーズ」とあるが、その徹底的に突き放した視点は、もしかしたら氏の思惑を超えて、エスの感情や感覚をより一層読者に引き寄せているのではないだろうか。

スペル・イー・エスは自分の名前を捨てたことで、過去の呪縛から解放された。だがそれは他者のみならず、自分自身をも捨て去ることでもあった。
ポルノチックなSEX描写や、ある種無残な精神崩壊、そして闇に生きる住人たちの哀切な心理描写――西条氏はベクトルの異なる三つの要素をなんなく融合させてしまったといえるだろう。
その接着剤として使用されているのが、エスの荒涼と乾いた視線である。

「死の恐怖が俺の生になる」と語るルリドは、快楽の頂点に死を間近に感じることでしか「生」を意識できない。

   自分の痛みさえまるで他人のもののように思うのか、それとも痛みとして判断する
   ことこそが苦痛なのか。

無邪気に、無防備に、ルリドは死を望む――「産まれる」ために。死んで産まれてしまったために失った「生」を取り戻すために。
そしてエスは憧憬にも似た視線で彼を見つめる。

   全く一つとして同じものなどないように、様々あって当然だ。
   エスは否定してはいけない自分を知っているから誰も否定することもない。
   ただ受け入れるだけだ。

ナルと交情しながら生と死の間際の危うさを凝視し、冷静にシャッターを切り続けるエス。
哀しくて、寒々しいシーンだ。そこには、見てはいけないものが詰まった箱を開けるときにも似た、微妙に愉悦の混じった不安がある。
おぞましいもの、深刻なもの、陰惨なものをただ見つめる視線。それがこの作品を、そしてシリーズ全体を満たす暗い何かなのだ。

本書にはこの「殺人音楽」のほかに、「精霊憑き」「THREE ORANGES KISSES FROM KAZAN」「Fingered」のSpell.e.sシリーズと他2作品が収録されているが、残念ながら絶版。その他の「スペル・イー・エス」シリーズ単行本未収録分は、西条先生のHP「第8病棟」の「SPELL E.S.」コーナーに掲載されいる。
また、2002年10月発行の『鋭利な刃物』は、同人誌で書かれたSpell.e.s.シリーズを収録。同人作品だけあって、エロも人体破壊の描写もますます冴えている。
ヒューマニズムやモラルだって? そんなもんなぞ軽ーくふっ飛ばした、饒舌でポップでダークな世界が過剰に素敵にてんこ盛り。壊れた世界に興味を持つ人にはたまらない作品集である。

補足:西条先生のHP「第8病棟」は「硝酸銀シャワー」に移転。
[Text]で小説を配信しているが、「SPELL E.S.」コーナーはなくなっちゃっている様子。
西条公威より西條公架(サイジョウキミカ)に改名している。

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22:42  |  その他の作家  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2002.11.03 (Sun)

小沢淳「ムーン・ファイアー・ストーン」

正式名称は『テイルズ・フロム・サード・ムーン』

内容
通称「金銀シリーズ」、「金銀諸国漫遊記」と呼ばれている。
世界はかつて三つの月を持っていた、しかし今では黄金と白銀の二つの月しか持たない。
この地を旅する、金髪のリューと銀の髪を持つエリアードの二人の青年がこの物語の
主人公である。その失われた第三の月こそが、彼らの生まれた地であった。
このシリーズでは長編・短編を織り混ぜ、月のごとき美貌の二人が旅先で出会う様々な
出来事を綴った耽美系ファンタジーシリーズ……ヒロイニックではないと思う。

書評
ティーンズ向けだからというわけではないが(ティーンズも侮れない昨今)さらりと、
葛藤なく読める諸国漫遊記(笑)。
実は、この作品はJUNEという意味ではなく、JUNE史という意味で果たした役割が
かなり大きい気がするので紹介させていただく。

明るくて綺麗でリアリティは一切ないホモセクシュアルを、堂々と少女向け小説で書いて
しまったことで、当時、いわゆる耽美といわれていたジャンルを当たり前のBLという意匠に
押し上げてしまった作品である。
榊原姿保美氏などが「JUNE」の中で暗くひっそりと(笑)やっていたものを、
白日の下にさらけ出し、一般的(メジャー)なものにしたわけで、この作品のヒットにより、
その後耽美物中心の角川ルビー文庫まで誕生させたといって過言ではない。

当時から美少年同士の絡みは確かに少女たちに受けていたけれど、アナル・セックスの
描写まで出てくるジュヴナイル小説はこれまでなかった。
もちろん作品には男同士の激しいセックスシーンはないものの、「同性愛はアブノーマル」という
葛藤はみられる。
ある意味で革新的ではあったけど、現状を考えると、こうまであらか様になったのでは
少々面白くないと感じるのは、たぶんかつてのJUNEファンではなかろうか。
そういう意味で分岐点的作品なのであり、当時、耽美系には珍しかった伸びやかな明朗さが
新鮮で私自身は好きな作品だった(じゃなければ全巻読んでないって)。

余談であるが、悩んだのは、一般的には女性的容姿のエリアードが「受」で、
基本的に女好きなリューが「攻」だと思うのだが、物語が進むにつれ、
文脈の微妙な言い回しからはどう考えても「逆」のように受け取れてしまうことだった。
もしかしたらリバーシブルだったのか?
だとしたら、その意味でも革新的だったかもしれない(笑)。

【シリーズ作品リスト】

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16:01  |  小沢淳  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2002.11.03 (Sun)

小沢淳(おざわ じゅん)

[作者略歴]
196x年生まれ。天秤座。A型。趣味は野球観戦、TVゲーム。
1991年 金と銀の旅(ムーン・ファイアー・ストーン1)でデビュー。
少女向け小説ということでさらりと読みやすい文体だったが、次作品『千年王国ラレン
ティアの物語』シリーズ(角川スニーカー文庫)では雰囲気が変わっていて驚いた思
い出が…(笑)。
ジャンルとしてはファンタジーだが、ミステリタッチの作品もある。
代表作として『ムーン・ファイアー・ストーン』『ラレンティア』『アキラ・プラーナ』各シリー
ズなど。

15:09  |  小沢淳  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
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