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2003.01.28 (Tue)

吉原理恵子(よしはら りえこ)

小説JUNE2号『ナルシスト』でデビュー。
双子の兄の、死してなお弟を支配する狂気を書いた作品で、『ナルシスト』というタイトルどおり、
兄の弟に対する凄絶な執着は、短編ながらその後の「別冊ぱふ」にて「執着心を描かせたら
天下一品」と言わしめた吉原氏の傾向を示している。

私は鬼畜は好きだけど、下品なのは苦手だ。
しかし吉原氏の描く、確信犯的エゴイストな鬼畜ぶりは妙に愛しい。
そして、エゴイスティックな鬼畜の対なる「受」は男としての矜持を失わず、
ぎりぎりの所で持ちこたえもするし、開き直りもする。ある意味、懐が深いともいえるかもしれない。

「ねっとり」と「濃く」「リアル」な男たち――間違っても「女の子な男の子」は書かない作家である。
人間同士の矜持を賭けるようなぶつかり合いを苦手としない人ならば、必読の価値あり。
シリアス、コメディとあるが、ハズレはないと思う。
代表作として『間の楔』『幼馴染み』『渇愛』『二重螺旋』など。



吉原理恵子/作者略歴
間の楔
銀のレクイエム
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テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

23:25  |  吉原理恵子  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2003.01.18 (Sat)

「虚の王」馳星周

2000年 光文社 カッパ・ノベルス/2003年 光文社文庫/2008年 角川文庫

したくないことは腐るほどあった。やりたいことはなにもなかった。


【内容】
渋谷を舞台に十代の心の空虚を描いた長篇暗黒小説である。
新田隆弘は苛立っていた。二年前まで「金狼」というチームを率いていた一人だった。渋谷を拠点にたった四人で都内を制圧し、酒、踊り、喧嘩に明け暮れるこの世の春を謳歌していた。四人なら、何でもできると思っていた。
だが、ヤクザが金狼を傘下に置こうとしたために隆弘はヤクザの一人を刺した。報復を恐れて、残りの三人は隆弘を見捨てて逃げた。隆弘は恨みを抱きながら単身、少年院入りとなる。
その間にチームは消滅、気づけば自分は、チーム時代に痛めつけたことのある紫原というヤクザの下っ端として、覚醒剤を売り捌いている。欲しいものもやりたいこともなく、ただ腹の底に鬱屈を溜め込んでいた。
その隆弘は紫原に命じられて、高校生売春組織の存在を探っていた。その結果、渡辺栄司の名前が浮上する。学業優秀、都内随一の秀才高に通い、大学受験を控えた一介の高校生が組織を仕切っているという。
格別喧嘩が強そうでもない優男の栄司が、明らかな恐怖でもって渋谷の少年たちを掌握している様を目の当たりにするうちに、隆弘の中で燻っていた何かが蠢き始める。
やがて彼らは、栄司という少年の彼らとは全く異質な人間の虚ろな生き様に、じわじわと侵蝕され、狂気を孕んでゆく。

【書評】
馳星周氏のデビュー作『不夜城』は、新宿を舞台に暗躍する中国人マフィアの抗争を描き、現代の東京という街を浮き彫りにしたリアルさで話題となった。そのため、馳作品でことさら話題にされるのは、裏社会のリアルさであり、そこに繰り広げられるハードボイルドな世界である。しかし本来ある馳氏の視点は、実は「居場所を探し、足掻く者たち」にあるのではないだろうか。
たとえば『不夜城』『漂流街』では日本人社会にも中国社会にも所属できない日系中国人であったり、『夜光虫』では外国人野球チームの中にいる日本人プレイヤーが、自分の居場所を探し、苦悩にのたうちながら墜ちていく。
そこにあるのは生々しい人間の生き様である。新宿歌舞伎町も中国人裏社会という舞台も、結局は彼らが生きている環境でしかないのだ。そのリアルな描写ゆえ、歌舞伎町はすっかり恐ろしい街と日本中に認識されてしまったようだが(笑)。

さて、本書は主人公が十代の少年たちのせいか、それらの作品よりも軽い印象かもしれない。暴力や情念がドロリと絡み付いてくるような感覚ではない。
だが、乾いた恐怖、とでもいったらいいだろうか。鋭利なナイフを突きつけられるような冷たく凝った痛みがある。鬱々悶々としている主人公が、ある日突然破滅に向かって暴走してゆく馳星周世界は健在だ。

流行りの少年犯罪がテーマかと思えるが、実は本作もやはり「居場所を見つけられない者たち」の物語といえるだろう。または、今居る場所が所詮「仮初めの居場所」にすぎぬことを意識し、鬱屈を抱えながらも足掻く若者の物語かもしれない。
栄司はヤクザを刺してついた「ハク」なんて、これっぽっちの役にも立たないことを知っている。それゆえ利口に立ち回り、その裏ではヤクザよりも残忍なことを平気でする。「賢く生きていくこと」をクリアしていく様は、栄司にとって生きることさえゲームにすぎないのだろう。
誰もが自分の居場所を求めて足掻く経験がある。逆に、足掻けるうちはまだ生きていけるのかもしれない。
その足掻きさえ、栄司はゲーム感覚としてしか捉えられない。その薄ら寒さの裏にあるのは「欲望の欠如」ではないだろうか。

相変わらずの強烈な暴力とSEX、破滅へとひた走る狂気が描かれているにもかかわらず、本作は他作品とどこか手触り違う。その違いは「欲望の欠如」にあるように思う。
本来生々しい欲望こそがキャラクターを突き動かすものだ。己の欲望を満たすために他人を裏切り、支配し、あるいは排除しようとする。だが本編ではその「欲望」がみえない。
栄司は言う。

「薄いガラスでできた花瓶があるとするじゃない・・・おれは絶対壊したくなるんだ。
どんなふうに壊れるのか。壊れるとき,どんな音がするのか。想像しちゃうんだよ。
想像しているうちに,どうしても壊したくてたまらなくなる。それで,壊しちゃうんだ」


欲望が根底にある衝動にはなんらかの目的がある。だが、ここにあるのはどこにも行き着けない破壊衝動だけだ。この作品の中に描かれる暴力や犯罪は、まさにその目的のない衝動によってのみ行われる。
橋本潤子による希生殺害しかり、新田俊弘による紫原殺害も、積年の怨みというよりも、むしろ自分でも抑えの効かない暴力衝動の果てに起こる。そこには倫理も道徳もない。
それでも尚、人はその衝動が引き起こした結果を正当化すべく、自分に対して言い訳し、責任転嫁を図ろうとする。そうするとこで己の精神の均衡を保とうとしているのだろう。そして、それすら探しようもないとき、人間は狂っていくのかもしれない。

だが、初めからその理由すら求めていないとき――衝動が「単なる衝動」と認識しているとき、人は「ある力」を持つのかもしれない。およそ人間らしい感情の欠落した栄司の、倫理も道徳も介入できない「虚」な心のみが知る、恐ろしい力を――。それもまた、狂気なのだと思いたい。

さて、それでこの作品がなぜJUNE発掘隊に入っているのか、である。

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01:29  |  馳星 周  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2003.01.07 (Tue)

「猫の遊ぶ庭」 かわい有美子

「どうすれば、よくなる・・・?」


kawai_a.jpg猫の遊ぶ庭
かわい ゆみこ
4883023575
1998/7/20
心交社ショコラノベルズ









K大の院に進学した織田和裕は、入居予定だった下宿の取り壊しのため、格安だけが取り柄の吉田寮に入寮することになった。大正時代に建てられ、前世紀の異物と称されるこの寮は老朽化が激しく、過激派や幽霊が住むとさえ噂される曰くつきの建物だった。
建物の古さに加え、強烈な個性を発揮する住人達に先の不安を感じる織田だったが、「まるで蒸留水で育ったかのような」涼やかな青年、杜司篁嗣と出会い、すっかり魅せられてしまう。寮内で唯一まともそうに見えた杜司と親しくなろうと、織田は必死になるのだが――。


『疵』シリーズなどのドロドロでダークな恋愛描写で、近年のBLを物足りなく思っている読者の不満を
補って余りある、かわいゆみこ作品(笑)。
でも魂を削るようなぎりぎりの恋愛ばかりじゃ疲れてしまう――というわけで今回は、夏が終わりを
告げ、風に秋の匂いがするころに読みたいような、どこかノスタルジックな雰囲気の漂う作品を取り
上げてみた。

本書には波乱万丈なストーリーがあるわけではない。また当人達は相手が同性である事にさしたる
疑問を抱くでもなく、それゆえの懊悩も深くなく、いたってシンプルだ。
織田は誠実にして温厚、世話好きな好青年。そして熱い情熱もちゃんと秘めている。じゃなければ
感性で男に惹かれ、性別を悩むことなく突き進んだりしまい(笑)。
そして「蒸留水を飲んで育ったような」美しきヒロイン(笑)杜司は、部屋の片づけができない、または
どんなに汚れていようと気にならない、少々感性がずれた青年である。

容姿からは文学、それも浪漫主義あたりが似合いそうな杜司の専攻は、宇宙物理。ついでに彼は、
宮司の跡取りという由緒正しき出自である。容姿と性格、感性のギャップが醸す、その空気がいい。吉田寮というノスタルジックで閉ざされた世界の中で、透明感のある、穏やかな陽射しのような存在
感がある。

年上のはた迷惑な3人組の憎めない悪辣さに振り回されながら、二人はゆっくりと距離を縮めていく。
当人たちに男性同士であるという葛藤がないだけでなく、周囲すらも嫌悪を抱かずに状況を受け入れ
ているあたり、生ぬるさをうまく表現していて絶妙である。
古き良き時代風の学生寮の雰囲気に呑まれて、ほのぼのと読みながら、そして時に、かわい氏らしい甘々を払拭するような、BLらしからぬ生々しい表現――「みっともなく鼻を鳴らして」など――に
どきりとさせられるのだ。
まったりと流れる「時間」にまどろみたい方にお薦めな1冊。
そろそろいい大人の女性としては恋にリアリティよりもファンタジーを求めていたい。というわけで、
この、まったり、ゆったり、ほのぼのな空間も捨てがたいのである(笑)。

尚、続編として『猫の遊ぶ庭~気まぐれ者達の楽園~ 』 がある。
こちらは 4つの中・短編集で、吉田寮での織田と杜司のその後の日々。
相変わらず甲斐甲斐しい織田くんの密かな野望と、おっとり杜司さんの意外な一面が垣間見られる、
微笑ましい作品集である。



*この記事は website【CAFE唯我独尊】から移行しました。

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21:35  |  かわい有美子  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

2003.01.07 (Tue)

かわい有美子 (かわい ゆみこ)

【作者略歴】らしきもの。

1995年「小説b-Boy」 (ビブロス刊)『EGOISTE』でデビュー。
鬼畜系から純愛まで、揺らぎない筆致でBL界に独自の世界を形作る作家のひとりである。
代表作は『EGOISTE』、『疵』シリーズ、『上海~うたかたの恋~ 』など。
おかげで官僚とかドクターを、つい色眼鏡でみるようになってしまう弊害が…(嘘)。
「上海倶楽部」という同人サークルを主催。商業誌とはまた異なる雰囲気の作品も発表しており、
根強いファンがついている。そして私もそのひとり(笑)。
『今、風が梢を渡る時』('02・小学館)頃から「かわいゆみこ」を「かわい有美子」に改名。

【追記】同人サークル「Blue on the Heaven」主宰。

かわい有美子個人サイト「Blue on the Heaven」
19:23  |  かわい有美子  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
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