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2003.03.28 (Fri)

「隠れ蓑』池波正太郎

『剣客商売 七』収録

人の絆とはかくも皮肉で、そして切ない。それは、もしかしたら老いを重ねてしみじみと分る人生の重みであるのかもしれない。

托鉢僧と盲目の武士という年老いた二人連れは、かつて秋山大治郎が旅の途中で出会い、袖すら触れ合うかどうかという程度の関わりであったが、何故か心に残っていた。
その老僧と、大治郎は偶然再会する。
かいがいしく盲目の武士を介護する老僧の姿は、さながら「念友」のようであった。だが、二人は二十八年におよぶ仇討ちの仇同士だった。

心の深奥で、静かに深く結びついているにも関わらず、老僧は常に罪の意識を抱えて生きねばならなかった。その相手を仇と知らぬまま、盲目の武士は道連れとなった老僧に感謝しつつも、そんな己にもどかしさが滲んだ諦念を抱いている。

「追う者」と「追われる者」という過去の因縁は、絡み合い、縺れつつ、肉親とも夫婦とも異なる不思議な関係を築いている。男色そのものを描いているわけではない。でも思わず、「これってJUNEそのものじゃない」と呟いている私がいた。

彼らの老いの寂しさ哀しさに己を重ねる小兵衛と、大治郎の若さが鮮やかな対比となって印象深い。読後、ひたひたと肌身に染み入る究極の「じじいJUNE」――というジャンルはないか?(笑)。

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00:53  |  池波正太郎  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2003.03.28 (Fri)

「妖怪・小雨坊」池波正太郎

新潮社 『剣客商売 』収録(第6話)

篠つく雨の中、おはるはその男を見た。男は妖怪の『小雨坊』にそっくりなのだという。次にその男は、大治郎の前に現れる。この異形の男こそ、伊藤三弥の兄であった。
三弥は自分の情人であった柿本源七郎の仇として秋山親子を討つために江戸に戻っていた。だが彼は隻腕である。己が敗れたときの仇討ちのために『兄』に助太刀を依頼したのだ。
三弥の父・伊藤彦太夫の利己的な腹黒さも天下一品(笑)。異形の『小雨坊』にしろ、三弥にしろ、つまるところ、この身勝手な父の犠牲者であったのかもしれない。
いつもは飄々と自然体の小兵衛だが、親としての情愛ゆえに己ひとりで『小雨坊』と対峙する。

本来憎まれ役の『小雨坊』や三弥ではあるが、ただの悪役に貶めていないところに、池波氏の視線の優しさを感じる。嫌悪や怒りよりも哀れさの方が先立つあたり、「人の世界は善と悪とが紙一重」の池波氏らしい。
最後まで三弥は「女」だけど、腕に覚えがあるだけに始末が悪いやね。

00:51  |  BL小説  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2003.03.28 (Fri)

「妖怪・小雨坊」池波正太郎

新潮社 『剣客商売 』収録(第6話)

篠つく雨の中、おはるはその男を見た。男は妖怪の『小雨坊』にそっくりなのだという。次にその男は、大治郎の前に現れる。この異形の男こそ、伊藤三弥の兄であった。
三弥は自分の情人であった柿本源七郎の仇として秋山親子を討つために江戸に戻っていた。
だが彼は隻腕である。己が敗れたときの仇討ちのために『兄』に助太刀を依頼したのだ。

三弥の父・伊藤彦太夫の利己的な腹黒さも天下一品(笑)。異形の『小雨坊』にしろ、三弥にしろ、
つまるところ、この身勝手な父の犠牲者であったのかもしれない。
いつもは飄々と自然体の小兵衛だが、親としての情愛ゆえに己ひとりで『小雨坊』と対峙する。

本来憎まれ役の『小雨坊』や三弥ではあるが、ただの悪役に貶めていないところに、池波氏の視線の優しさを感じる。嫌悪や怒りよりも哀れさの方が先立つあたり、「人の世界は善と悪とが紙一重」の池波氏らしい。
最後まで三弥は「女」だけど、腕に覚えがあるだけに始末が悪いやね。

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00:50  |  池波正太郎  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2003.03.28 (Fri)

「剣の誓約」池波正太郎

新潮社 『剣客商売 』収録(第2話)

戦のない太平楽な当節の道場経営では、弟子を適当にあしらい、時々わざと打たれてやって機嫌をとるのが必要である。つまり、海千山千の大狸である小兵衛ならともかく、若さゆえに潔癖で実直な(朴念仁ともいう)大治郎に経営手腕が期待できるわけもなく、道場としてはおよそ時代遅れなのだが、本人はそれを気にもしていない――いいなぁ、こののんびり加減(笑)。

だが、そんな世の中にも勝負に生きる剣客がいる。その「剣客の宿命」が本作のテーマである。剣客の宿命とは、「好むと好まざるとにかかわらず、勝ち残り生き残るたびに、人のうらみを背負わねばならぬ」ということであり、「負けたものは、勝つまで、挑みかかってくる」ということであり、「勝負をはなれたものとても、ついには勝負から逃れることができぬ」ということ。

大治郎の師匠である嶋岡礼蔵はこの宿命のために遠路江戸にでてきた。死を覚悟した勝負である。その「剣の誓約」の相手である柿本源七郎もまた、心臓の病をおして、剣客として勝負に挑もうとしていた。
だが、源七郎の弟子・伊藤三弥は夜陰に紛れて弓を射り、礼蔵を殺害するも、大治郎に右腕を切り落とされてしまう。
「剣の誓約」を汚され、そのような弟子に三弥を育ててしまったことを悔やむ源七郎だが、三弥に源七郎の悲憤は理解できない。三弥は師であり情人である源七郎を護ったつもりだからだ。
このあたりの三弥の心情は恋狂いの「女」だ。池波氏の作品全体から図れるのだが、氏の根底には根強い女性不信が垣間見える。その部分を反映しているのが三弥のなかにある「女」ではないだろうか。
剣客としての死を望む源七郎に応え、礼蔵の代わりに立ち会う小兵衛と、その試合を見守る大治郎。その瞬間、秋山親子は「剣客の宿命」をまたひとつ背負うのである。

ここに登場する伊藤三弥は後日再び、秋山親子の前に姿を現す。それが次にご紹介する『妖怪・小雨坊』である。

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00:47  |  池波正太郎  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2003.03.17 (Mon)

小川いら 「恋心」

人を好きになることが苦手だった。



大崎が京都で出会った、旅行中の美しく淋しげな青年。
人の温かさに飢えたような彼に惹かれ、大崎はその日のうちに彼を抱いてしまう。
名前も告げずに去った彼に再び会いたいと願うが、大崎には為すすべもなかった。
ところが、大崎が日本史の講師として招かれた大学で、2人は偶然再会する。
由岐也と名乗る青年は、大学内の図書館に勤めていたのだ。傷つくことを恐れ、
恋にためらう由岐也に、大崎は優しく想いを伝え続ける。
いつしか由岐也は再び恋に心を開き始めて…。静かでありながら、激しく切ない大人の恋物語。



今市子さんだ! で手に取ったイラスト買い(笑)。もちろんイラストは作品の中身を象徴している
わけで、絵描きさんと作者と読者の趣味が一致すると、当然満足度が高くなる。そして今回は
当たりだった。

大人のふたりの恋だから、がむしゃらさはない。互いを気遣いながら、でも心の奥には深い
情熱がある。
激しい出会い、そして名前も告げずに別れるも、大崎いわく「運命の粋なはからい」で再会し、
少しずつ心の距離を縮めていく…という、昔から何度となく使われてきたシチュエーションなのだが、
切なさが滲みでる静かな空気がとても心地よい。

恋愛小説は「ふたりの世界」に溺れるにも、その恋のあり方に読者を問答無用で巻き込めるか、
納得させられるか、そしてそこにあるはずの葛藤などが浸透していく時間が必要だ。
その部分をいかに描くかで、作品を濃くも薄くもする。本作はさらりと淡白な物語だが、
キャラクターの造形と、彼らが積み重ねていく情感の細やかな描写がこの作品を引き締めている。
そういう意味では、かわい有美子氏の『上海金魚』が連想された。

偶然が作用するエピソードが続くことが気になるところだが、出会いは偶然だとしても、
関係を続け深めていく力をもたらすのは、積極的な情熱なのだろう。誰かに愛されること、
誰かの温もりを安心して信じられること。それは恋に臆病になっている心に深く響くキーワードだ。
この作品はその切なさをじんわり描くから、激しくて優しい気持ちで満ちている。


恋心 (アクアノベルズ)
恋心 (アクアノベルズ)




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14:51  |  小川いら  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2003.03.09 (Sun)

「スタンレー・ホークの事件簿 Ⅰ~Ⅳ」山藍紫姫子

「あぁあ…、身体の内が、熱い……お前が…暴れている…」

(この台詞、情交シーンではないよ…笑)


仮面(ペルソナ)―スタンレー・ホークの事件簿〈1〉
葛藤 アンビヴァレンツ―スタンレー・ホークの事件簿〈2〉
二重自我(ドッペルイッヒ)―スタンレー・ホークの事件簿〈3〉
採集家 コレクター―スタンレー・ホークの事件簿〈4〉(すべて花音ノベルス)

【内容】
彫像の公園で性器を切り取られ、男性裸像の下に放置するという連続殺人事件が起きた。
不良刑事スタンレーは、捜査線上に浮かんだ犯人像と上司であるロスフィールド警視の容姿が一致することに気づくところから物語は始まる。
金髪碧眼の美しき警視・ロスフィールドは、いわゆる「いたこ体質」で、死者の残留思念や相手の思念に感応する能力を持っている。その不安定な能力は彼にとって諸刃の剣でもある。日系人精神科医ジン・ミサオはその能力をケアできる存在であり、また、ロスフィールドとは愛人関係にある。
ロスフィールドの不可解な行動に疑惑を持つスタンレーだが、次第に上司であるロスフィールド警視の危うい魅力に捕らわれてゆく。
裕福な一人暮らしを狙った連続強盗殺人事件、内臓を抜かれた猟奇殺人事件などの事件を通して、ロスフィールドをめぐって揺れる妖しい三角関係が織り成される。

【書評】
美貌の警視×バツ一の刑事×精神科医の危うい関係を軸に展開する、サイコミステリー……本の案内にはロマン・サスペンスとあるが、微妙に違うような気がする。
刑事物だし、猟奇的事件も起きるが、ロスフィールドと2人の騎士(!)の関係に主眼が置かれているので、描写はそれほどグロテスクではない。謎解きミステリーの部分も充分楽しめるのでお薦めする次第。

本書は中短編集で構成されており、一つ一つの事件は一話のうちに解決する。
少しばかり人間不信のバツ一不良刑事が美しき上司を巻き込んで事件を解明していくあたり、「おいおい…」と少しばかりツッコミたくなる境地、都合のよすぎる展開など無きにしも非ずだが、しかし、もう一方の主軸である、男たちの微妙な関係が妖しげに展開しつつ、徐々に不安を醸成するかたわら、伏線が張られている。
後半、一気に物語がうねりだし、思いがけない事件へと発展させていく。この膨らみきった謎と妖しげな雰囲気の横溢を、いかなる手腕をもって、解決に導くのか? 興味津々。

過激なSMまがいのSEXを得意となさる山藍作品の中では、そちらの表現は比較的おとなしめ――というか、なんと普通にインモラルでロマンチックなので、山藍作品入門に最適かと。
一癖も二癖もある男たちなのに妙に可愛げがあって、なんだか愛しくなってしまう。美意識を感じさせる表現がことさら読み手の妄想を煽っているのかもしれない(笑)。個人的にはもっとあざといストーリー展開をしてほしかったかな。

CD化もされており、ノーブルなロスフィールドを、この手のドラマにはもう出演しないと宣言されていた速水奨さんが上品にあてているのだけど、ちょっとしか出演していないジン役の塩沢兼人氏が妙にカワユクて、ちょっとびっくり(リリコさん、ご協力感謝♪)。


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