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2005.09.24 (Sat)

「レディ・ジョーカー」 高村 薫

1997年12月/毎日新聞社

重厚な読み応えのある作品である。
それぞれの組織のそれぞれの論理と、事件に関わる個々の事情が錯綜し絡み合いながら、社会の有り様を破綻することなく描ききっている。
でも、なによりも注目すべきは……

これって、JUNEだったのね←きゃーっ、殴っちゃやーよ。

栗本薫さんはその道の方だからともかく、篠田真由美さんといい、高村薫さんといい、デビュー当初は一般作品を書いている方だと思っていた作家さんが、さり気なくJUNEちっくな作品を書いていて、ときどき驚かされる。

殿方の中に「男心に男が惚れた」的因子をかぎつけるのは、女性作家特有の視点なのかも…なんて考えたり。でも、池波正太郎氏をはじめ、大沢在昌さんとか馳星周さんとか、男性作家も結構書いているのだけどね。
ただ意外なことに、男性作家さんの方が言い訳がましくなく、さらりと描いているような気がする。

――閑話休題。
デビュー作『黄金を抱いて翔べ』は文章フェチの私はちょっと苦手だった。以来、ご無沙汰していた高村氏の作品であるが、ここではまった……今さらだけど(笑)。
物語の道すがらに出会うものは、社会の閉塞感だけだ。

本書の中心をなしている犯罪は、グリコ・森永事件を下敷きにしていると思われるが、この事件の不透明な要素たちを、高村氏は作品の中で再構築していく。
日本一のビール会社・日之出麦酒の社長・城山が「レディ・ジョーカー」に誘拐され、製品を「人質」に現金20億円(表向きは6億円)を要求される。城山は警察とマスコミの目を欺き、犯人グループとの裏取引を実行していくのだが、まず事件の発端までが長い。主要人物をひとつひとつ丁寧に提示したうえで、作者はこの事件を、犯人側、警察側、新聞社側、そして犯人が脅迫する企業の動きや心理を、それぞれ丹念に描き出し、物語は複雑に展開していく。

「レディ・ジョーカー」を名乗る犯人グループの各個人は、どうにもならない現実に倦み、厭きている。
行き場のない彼らの共通項は競馬だけだ。
それぞれの境遇から内面に抱えた鬱屈を社会に向けて表現しようとし、それが犯罪という形で実現することになる。当然、彼らの結びつきは偶然に過ぎない。動機も目的も、行き当たりばったり的要素が強い。
そもそも犯人たちが金の奪取を第一にしていないのだから捜査は困難を極める。さらにこの事件を契機に、企業を取り巻く大きな腐敗構造が顔を出すことになる。

本書の大きな特長をひとつ挙げるとすれば、構成の綿密さ、用意周到さ、几帳面さ、ということになるだろうか。
警察だって部署が違えば優先順位が違う。キャリアとノンキャリアの温度差。警察署内にも対立があり、警察対検察の縄張り争いもある。新聞社の姿勢と、記者の事件に対する執念。
企業内部の闇の部分は代議士や総会屋へ、そしてまた、仕手筋や韓国の闇の組織へと連鎖していく。
犯人探しとか、どんでん返しのようなミステリ的要素はほとんどなく、ひたすら、じりじりとした駆け引きが展開していく。読後の切れ味もよいとは言えないが、重厚な読み応えのある作品である。
それぞれの組織のそれぞれの論理と、事件に関わる個々の事情が錯綜し絡み合いながら、社会の有り様を破綻することなく描ききっている。

伏線として取り上げられた部落差別問題、在日朝鮮人問題、障害者問題、老人問題等についての掘り下げ方は中途半端で、刺身のツマのような扱いになっているのが残念。だがそれも、どこまで行っても真の解決に至らない、社会的諸問題が内包する矛盾ゆえなのかもしれない。「日本はどうなってしまうのか」の一文が胸を突く。


さて、以下はJUNEな視点になる。


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テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 本・雑誌

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