2007.11.28 (Wed)
「銀の鎮魂歌」 吉原理恵子
あらためて気持ちの変化が読み取れたりして新鮮ですわん。
「銀の鎮魂歌」 (KAREN文庫 Mシリーズ)
吉原理恵子
抜けるような蒼い五の月の空の下二年ぶりの故郷に帰って来たキラ。
懐しい故郷、そこには愛しい男がいる。男の名は、若き帝王ルシアン。
二年前、愛しあうふたりをある出来事が引き裂いた。〈愛〉と〈憎悪〉が錯綜する、
めくるめく愛の鎮魂歌。
『銀のレクイエム』(ルビー文庫版)から『銀の鎮魂歌』とタイトルが変わっているけど内容は同じ。
美しく儚げなラブ・ストーリー。
ある意味ではきわめて日本的で古典的な物語ともいえます。
感傷的な作品をてらうことなく、研ぎ澄まされた言葉が心を揺さぶり、もはや魂もっていかれ状態。
吉原理恵子『銀のレクイエム』の感想ページへイラストが変わると作品イメージも変わりますね。
新版の印象的なカバーイラストは小島文美さん。

こちらは1993年発行のルビー文庫版で
挿絵は波津晶子さん…可憐です。
2007.11.23 (Fri)
『テイク・ラブ』 野村史子
書店で見たときには思わず目を疑ってしまったけど、なんとも懐かしく、
著者の野村史子さんの作品には思い入れがあった分、
胸にじんわり染み入るものがありました……本屋でうるうる
しそうになったじゃないかー、ってくらい(恥)。
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エクアドルから15年ぶりに帰ってき来た日本。山崎には、その15年間、1日たりとも忘れることのできなかった恋人がいた。その恋人のおもかげを追って、山崎は重く苦しい過去の中へと入っていく…そこで、山崎がふたたび目にしたものは何だったのか。夢と現実のはざまで動く、脆く、儚い男たちの仮面舞踏会。表題作の他「アウト・オブ・フォーカス」「薔薇はもうこない」を含む、愛の短篇集第2弾。
うーむ……「仮面舞踏会」

1991年初版という時代を感じさせるこの耽美な紹介文は、再考してもよかったんじゃないだろうか。

こちらは私が持っている角川スニーカー版で、
挿絵は麻々原絵里依さん。
思えば当時、ルビー文庫はまだ発刊されていなかったのだよ。
でも復刻するなら『レザナンス・コネクション』(愛の短篇集第1弾になるのかな)から
再版したほうがよかったんじゃないかしら。
本書の表題となっている「ティク・ラブ」はとても優れた作品ではあるのだけど、
背景となっている学生運動やそれに付随する事柄が
新しい読者さんには理解しにくいという声もあるようです。
私も学生運動自体を知る世代ではないのだけど、
まだなんとなく話題になったり聞きかじったりしていたので、
背景が分からないという意見にはちょっとびっくり。時代なのねぇ

私はこの表題作の「ティク・ラブ」と「アウト・オブ・フォーカス」も好きだけど、
もう一冊の『レザナンス・コネクション』の方がもっと好き。
そして今の時代を考えると、こちらの方が分かりやすいかもしれません……痛いけど。
野村史子さんの感想ページはこちらです。実は私がHPを作るきっかけとなったのが、野村史子さんの作品を紹介したかったからで、
私にとってのBLベスト10に入る作家さんです。
なので、レビューにもリキ入っております。ぜひ覗いてみて下さいな(笑)。
それにしても、野村史子さん……よく再版をOKなさったなあ。
恋する乙女のごとく、今でも愛しく思える作品に出会えたことを感謝します。
2007.11.19 (Mon)
『情熱の温度』 木原音瀬
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自殺しようとした高校の教師・泉野を父が助けた縁で、吉川の家に泉野が来るようになった。暗い泉野に嫌気がさしながらも、一緒にいるうちに彼の意外な面も見えてきて、しだい惹かれていくのだが…。
不器用な教師・泉野とそれに振り回されながらも一途に愛する生徒・吉川の話。
たどたどしいけれど情熱的な恋愛模様が紡がれていく。
ただ側にいる為だけに自分の恋情を押さえ込み、
相手の幸せばかりを願う吉川の無償の愛。
そんな吉川に惹かれつつも、その小心さゆえに逃げる泉野。
リアリティのないこんな二人の関係を、
圧倒的な説得力で物語に昇華させるのは作者の力量ってもの。
木原作品全般に言えることなのだが、とにかくキャラの性格がよろしくない(笑)。
自己中心的だったり、小狡い奴だったり、超ことなかれ主義の裏表野郎だったり…。
本作の泉野の性格にしても、悪人ではないけれど、良いところも見つけにくいし、
本人からして、「何の取り柄もない、人に迷惑をかけるだけの最低な男」と
自己評価するくらいだ。
要領が悪く臆病な彼は、何をしても後悔ばかりで、そんな自分を情けなく思いながらも、
今さら変われないことも自覚しているのだが、どうにも歯痒い。
私が彼にイラつくことなく読めたのは、泉野に感情移入し、
彼の視点で読んでいたせいかもしれない(陰気なおやじにシンクロしてしまった…)。
神経質で、臆病。優しくて強い年下の男に心を乱されるけど、
その気持ちを持て余すことしかできない。
挙句に逃げて、職も失い、他の愛を得ることもできず、さらに身体に障害まで負ってしまう。
そしてやはり自分の居場所は見つけられない。
追いつめられて、ギリギリのところに立って、
初めて自分の本当の気持ちに気付く男の、なんと愚かで、愛しいことか。
そんな泉野の我が儘放題を許せる吉川クンは、お人好しというか懐が深いというかは、
読み手の感性によるところだろうか。
夢見る乙女にとって、白馬に乗ってきた王子様にも匹敵する理想の恋人なのだろうけど――
いないよ、こんなヤツ(笑)。
それでも、雪の降る中、最後まであきらめなかった吉川の無償の愛に、温かく涙した。
すべてを失った空虚な泉野が、「全部くれてやる」と言うまでのくだりは秀逸。
目眩がするような高揚感に浸ったのだ。
2007.11.14 (Wed)
『眠る兎』 木原音瀬
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ほんの冗談で書いた手紙をきっかけに、高校生の浩一は、十も年上の男と付き合うことになってしまった。男が名乗る名前も職業も偽りだと知っていたし、他に好きな女の子もいたけれど、男があんまり純粋で―。(「BOOK」データベースより)
木原さんのデビュー作。
臆病で消極的な年上の男(高橋)に恋する高校生(浩一)といったら、メルヘンである。
リアリティが薄い設定にもかかわらず、不自然さを感じさせないのは、
作者の力量ってもの。
キャラが息づいている確かさがあって、質のいい恋愛小説だと思う。
切ないのに、ほんわり暖かい読後感が残る秀作だろう。
浩一がどんどん男っぽくなっていくのも素敵。恋の力は偉大なのだ

同時収録の「冬日」は「眠る兎」の後日談で、
実家に帰省した高橋が初恋の相手に再会する話。
こちらはうっとり甘い。
こんな恋ができたら人生に悔いはないだろうな(笑)。



