2007.11.19 (Mon)
『情熱の温度』 木原音瀬
![]() | 情熱の温度 (アイスノベルズ) 木原 音瀬 (1999/08) オークラ出版 この商品の詳細を見る |
自殺しようとした高校の教師・泉野を父が助けた縁で、吉川の家に泉野が来るようになった。暗い泉野に嫌気がさしながらも、一緒にいるうちに彼の意外な面も見えてきて、しだい惹かれていくのだが…。
不器用な教師・泉野とそれに振り回されながらも一途に愛する生徒・吉川の話。
たどたどしいけれど情熱的な恋愛模様が紡がれていく。
ただ側にいる為だけに自分の恋情を押さえ込み、
相手の幸せばかりを願う吉川の無償の愛。
そんな吉川に惹かれつつも、その小心さゆえに逃げる泉野。
リアリティのないこんな二人の関係を、
圧倒的な説得力で物語に昇華させるのは作者の力量ってもの。
木原作品全般に言えることなのだが、とにかくキャラの性格がよろしくない(笑)。
自己中心的だったり、小狡い奴だったり、超ことなかれ主義の裏表野郎だったり…。
本作の泉野の性格にしても、悪人ではないけれど、良いところも見つけにくいし、
本人からして、「何の取り柄もない、人に迷惑をかけるだけの最低な男」と
自己評価するくらいだ。
要領が悪く臆病な彼は、何をしても後悔ばかりで、そんな自分を情けなく思いながらも、
今さら変われないことも自覚しているのだが、どうにも歯痒い。
私が彼にイラつくことなく読めたのは、泉野に感情移入し、
彼の視点で読んでいたせいかもしれない(陰気なおやじにシンクロしてしまった…)。
神経質で、臆病。優しくて強い年下の男に心を乱されるけど、
その気持ちを持て余すことしかできない。
挙句に逃げて、職も失い、他の愛を得ることもできず、さらに身体に障害まで負ってしまう。
そしてやはり自分の居場所は見つけられない。
追いつめられて、ギリギリのところに立って、
初めて自分の本当の気持ちに気付く男の、なんと愚かで、愛しいことか。
そんな泉野の我が儘放題を許せる吉川クンは、お人好しというか懐が深いというかは、
読み手の感性によるところだろうか。
夢見る乙女にとって、白馬に乗ってきた王子様にも匹敵する理想の恋人なのだろうけど――
いないよ、こんなヤツ(笑)。
それでも、雪の降る中、最後まであきらめなかった吉川の無償の愛に、温かく涙した。
すべてを失った空虚な泉野が、「全部くれてやる」と言うまでのくだりは秀逸。
目眩がするような高揚感に浸ったのだ。
【More・・・】
ところで、本書「情熱の温度」と先に紹介した「眠る兎」は、
両作品とも、高校生×先生という組み合わせといい、
不器用で小心な
内容を混同してしまうのだけど、
ダメダメ振りは泉野先生のほうが数段上かなあ?
だからどうって訳じゃないけど、攻の高校生がすごくいい男に成長していくところも見もの。
恋の力は侮れませぬ
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