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2007.11.28 (Wed)

「銀の鎮魂歌」 吉原理恵子

魂の半分を引きちぎられては、生きてはゆけぬのだ……



復刻ばやりで、懐かしさもあるけど、大人になって読むと、
あらためて気持ちの変化が読み取れたりして新鮮ですわん。

銀の鎮魂歌 (KAREN文庫 Mシリーズ) 「銀の鎮魂歌」
 (KAREN文庫 Mシリーズ)

 吉原理恵子 









抜けるような蒼い五の月の空の下二年ぶりの故郷に帰って来たキラ。
懐しい故郷、そこには愛しい男がいる。男の名は、若き帝王ルシアン。
二年前、愛しあうふたりをある出来事が引き裂いた。〈愛〉と〈憎悪〉が錯綜する、
めくるめく愛の鎮魂歌。



『銀のレクイエム』(ルビー文庫版)から『銀の鎮魂歌』とタイトルが変わっているけど内容は同じ。
美しく儚げなラブ・ストーリー。
ある意味ではきわめて日本的で古典的な物語ともいえます。
感傷的な作品をてらうことなく、研ぎ澄まされた言葉が心を揺さぶり、もはや魂もっていかれ状態。

イラストが変わると作品イメージも変わりますね。
新版の印象的なカバーイラストは小島文美さん。
  
  こちらは1993年発行のルビー文庫版で、
  挿絵は波津晶子さん…可憐です。









内容
キラは、ジオの国の若き帝王ルシアンの寵愛を一身に受ける小姓だった。しかし誤解から生
じた陰謀によって帝王の逆鱗にふれ、国を追放される。
それから二年後、ぬけるような蒼穹が広がる五の月(ル・ナン)に、キラはたった一つの望み
を胸に、懐かしい故郷に帰ってきた。
詩謡い(リューン)に身をおとしたキラは心ならずもルシアンと再会する。深くキラを愛するが
ゆえに、歳月を経てもルシアンの憎悪は激しい。だがキラは何も語ろうとはしない。
絶望の果てにすべてをのみ込んで、ようやく生きてきたキラだった。憎悪を浴びながらも、キ
ラの身のうちにはルシアンへの恋慕の情が静かに燃え続けていた。
そしてまた、キラの、あまりにも清廉な様子は、ルシアンの怒りをさらに煽り、また陰謀に関
わった者たちに一生消えぬ烙印となった負い目を疼かせる。

だが遂に、ルシアンは真実を知る。
キラを追い詰めた自分の愚かな裁量、惨い仕打ちに苦悩するルシアン。そして身の内に息づ
くキラへの変わらぬ愛に気づいたとき、すでにキラの余命は少なくなっていた。
甘い言葉を交わすこともなく、だが、つかの間の穏やかな時を二人は過ごす。
キラがジオに戻ってきたたった一つの望み――ナイアスの花吹雪をもう一度見たい――を果
たすように死を迎える。最愛の者を失ったルシアンは……。

書評
本書の後書きにもあるが、絡みつく情念を得意とする吉原氏としては、ちょっと珍しい「少女
マンガ」風の叙情的作品だ。
熱い。熱くて痛い。そして静寂がある。もう、魂もっていかれ状態である。
久しぶりの再読だったが、心の奥にある自分でも気がつかないところを刺激されたというか、
乙女心を突かれたというか、これこそが「愛」だとなんだか嬉しくなってしまった。
ある意味ではきわめて日本的で古典的な物語かもしれない。
感傷的な作品をてらうことなく、研ぎ澄まされた言葉が心を揺さぶり、これはもう、吉原氏の
魔力に圧倒されるしかないってもんである。

ルシアンの激しい憎悪を投げつけられ、晒し者にされながら、なお沈黙を続けるキラの姿が
切なく心に染みる。

 この世では成就できなかった、最初で最後の恋――――
 ナイアスの花吹雪が見たくてもどってきたのか。それとも、ルシアンに忘れ去られた
まま逝くのが辛かったのか。
 もしも、憎まれることで、帝王の胸に生きた証が残せるのならば……。そんなバカな
想いが、頭のへりをフッとかすめて消えた。


ラスト――死してなお、キラはルシアンとともにある。
キラの静かに満ちてくるような愛に対し、激情ともいえる愛を持て余す活火山のような男の、
命そのものへの抱擁。
私がこの物語に泣けるのは、自分を恥じ、激しく人を恋う、その内にある魂のあり方があまり
にも激烈で、あまりにも初々しいからだ。
愛とは、かくも残酷で、でも揺るぎなく美しい。
そして、厳しい恋を描きつつも、吉原氏の筆は決して熱くならない。落ち着いた端正な語り口
の奥で、しかし静かに燃えている。

模範的な主人公たちによる模範的な物語に、みえみえのハッピーエンドまでつきあうのもい
いけれど、時には心の大掃除をかねて、こんな美しく切ない物語に浸ってみるのも悪くない。


吉原理恵子/作者略歴
間の楔
銀のレクイエム

【More・・・】

そういえばルビー文庫創刊時のことだけど、雑誌「JUNE」掲載の時と文庫化するときと、
なぜか挿画家さんを変更した作品が多かったっけ。
たとえば、
「タクミくんシリーズ」(ごとうしのぶ著)は[橘しいな]さんから[おおや和美]さんへ、とか。
雑誌で読んでいる人には微妙に違和感があったり、逆に嬉しかったりと
反応は様々だったような。
何でだったんだろう。
やっぱり売れ筋を考えて…、かな。

テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

23:46  |  吉原理恵子  |  TB(1)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●ジオ皇帝の座を捨てるかキラを守り皇家の血を繋いでいれば…

はじめまして。
 『小説JUNE』に掲載されていた時と同じ挿し絵で初文庫化された角川ルビー文庫の『銀のレクイエム』の方が絵は良かったですね。加筆修正されるのは仕方ないですが、変えないで欲しい部分がかなりありました。
 「宮廷医師エンゲルト」が「薬師ジェナス」に、キラの母が「マミカ」から何故か「アーシア」に変更され一度は嫁いだもののルシアンとイリスの母シアヌークに請われ後宮に戻ったという設定が文庫版では一度も嫁がずに誰とも知れぬ男の息子としてキラが生を受けたと後ろ指さされる身にしてしまった呆れた母親像になっていたのもショックでした。
 しかし、KAREN文庫Mシリーズで挿し絵が小島文美さんと知り表紙を見た限りでは美しいと思ったのも束の間、中の挿し絵はキラもルシアンも不細工で、その上、ルシアンは17歳にして既にオヤジで設定変更よりも大きなショックを受けました。
 ラストで、ルシアンの心もまたキラの死と共に現世を離れてキラと共に旅立ってしまい、生ける屍のルシアンだとは知らずにマイラがキラを越えることが出来たと我が世の春を謳歌するのも僅かな間だけで終わることは救いでした。マイラが嫌いなのも理由ですが、ルシアンが直系の世継ぎをもってソレル皇家の血を繋ぐ責務を放棄しなければ、ラストでの会話にあるようにマイラに限らず誰かを娶りキラを死なせずに幸福な生涯をすごせたのだろうと思うと哀しくてなりません。
ヨシュア |  2007年12月01日(土) 09:52 |  URL |  【コメント編集】

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