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2002.06.12 (Wed)

尾鮭あさみ「舞え水仙花」

病んでいずして、どうして、なにが愛せよう。


▼内容
畏れ多くも顕聖二郎真君と少年神ナタ太子を主軸とするチャイナホリックファンタジーのシリーズ物。
「七十二洞の魔王たちでさえはだしで逃げる」札つきの暴れ者ナタは、
最高級の霊力の証である眉間に霊眼を持つ二郎真君と結ばれ、まことに不本意ながら人界で
修行中である。荒れ道観に住みつくも、霊験を聞きつけた人々の祈りの声にナタは苛立っていた。
そんな彼らの前に現れたのは二郎神に焦がれ死に、ついには花精となった藍采和(らん さいわ)。
藍はナタを恋敵と恨み、その魂を冥府に連れ去る。
ナタの魂を追うために二郎神は、自ら霊眼を剣で突き刺し、首をかき切って命を絶つのだが――。

▼書評
作者紹介に書いた「三点セット」が炸裂しています(笑)。
良きにつけ悪しきにつけ(考えなしかも)一途なナタは可愛くて淫乱だし、
二郎真君は頼りがいがあるけど意外とけなげだったり、モラトリアムな正体を暴露する藍は別嬪さん。

そして絢爛たる(暴走する)イマジネーションに圧倒されているうちに、ふと藍采和の漏らす
哀切な呟きに胸を突かれます。

(願いをもつ者、みな病んでいる。私と同じ狂気でなくば――)
花に狂って常世を求め、それとも修羅場に愛を見る?



藍にとって丹精した美しい花々は己れの居場所の象徴であり、自身の存在する意味すらも
そこにあります。
二郎神への執着が恋ではないと気づいたとき、藍は「どこにも根づけぬ」己れをさらに
追い込んでしまいます。
藍のこの呟きは心臓が痛くなるほど孤独な魂の絶叫でしょう。哀しいね。

でもこんな感想なんて尾鮭作品には必要ないのではないかしらん。
それこそ分かる人だけ分かるノリ、イキのよさを、爽快と感じるか居心地悪く感じるかかは、
皆様の感性におまかせするとして――二郎真君をはじめ、私の持つ道教の神様のイメージを
きれいさっばりと打ち砕いて下さり、しばし途方にくれたことを思い出します(笑)。

シリアスのようでコミカル、コミカルのようでシリアスなエピソード、
そのたえずどこか脱臼しているようなドライブ感がたまりません、はい。


舞え水仙花 (角川文庫―スニーカー文庫)
舞え水仙花 (角川文庫―スニーカー文庫)(初出1990年10月「小説JUNE」/1992年角川ルビー文庫)

テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

15:22  |  尾鮭あさみ  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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