FC2ブログ
2020年08月 / 07月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫09月

2002.10.25 (Fri)

柏枝真郷 「DESPERADO」シリーズ

「……ああ……あんただ……」


シリーズ作品を書き出してみて気づいたのだが、このシリーズとのお付き合いは10年にもなって
いた。カバーをかけてあるが、何度も読み返したため、本の閉じしろの糸が緩んでしまった巻もある。
それでも未だに新作を楽しみにしている。
キャラクターが魅力的であり、心理描写が丁寧に描かれていること。そして深みや広がりを次第に
見せていく巧みなストーリー展開に、ついつい引き込まれてしまうのだ。

シリーズ書評
デスとあだ名される元刑事のさえない私立探偵クラークと、黒髪と緑の瞳の美貌の青年アンソニー
(トニー)のふたりが、イーストリバー市という架空都市の谷間に生きる人々の哀歓と、そこに展開
される数々の事件の真相を追求してゆくミステリ小説(というよりハードボイルドかな)。

ボタンをひとつ掛け違えたための悲劇というのだろうか。そこから事件は起こる。
その根底にあるのは愛だ。それがどんなに歪んだ愛情でも。
柏枝氏の描く人間はみんな傷を負っている。愛に飢え、痛みに耐えかねて事件を起こしてしまう
哀しい人間ばかりである。
そしてまた事件を追う人間も、心に深い傷を負ってる。
しがない探偵デス(クラーク)も、貧しさゆえ生きる為に男娼をしていた過去を持つトニーも、
そしてゲイバーの女(男)たちや、罪を犯してしまう人間も、深い深い傷を負っている。

     生きていくことは辛いこと――それでも懸命に生きていく。
     いつかは幸せになれるのかもしれないから。

彼らは互いの傷や重い過去を抱えながらも、懸命生きていこうとしている。
そして様々な哀しい事件を解決していきながら、デスとトニーの関係もすこしずつ変わっていく。
いつか別れる時がくる――どこか刹那的だったトニーも、やがて2人の未来を考え、大学に通い
始めるなど、前向きに歩き出す。
それに比べると、物語がデスの視点で書かれており、また彼が大人である分、内相的かもしれない。
1度は社会からドロップアウトしてしまったデスは、事件の度に彼は自分の過去と向かい合い、
傷ついている。暗い男である。だが、

「トニーがオカマなら、俺もオカマだ。さあ、俺をオカマだと言ってみろ」

なんて言いきれちゃう男気のある奴なのだ。

事件が解決しても、ハッピーエンドとは限らない。
むしろ真実が曝されることで傷つき、苦悩することになるような、ほろ苦い結末へと導かれる。

この小説の主要な登場人物には悪人はいない。いるのは、誠実に懸命に生きている普通の
人間たちだ。このシリーズの魅力は、そんな作中人物に対する慈愛に満ちた作者の視線にある。

深い闇に触れてしまうにもかかわらず、それでも読後感には救いがある。
ほんのりと心が温まり、癒されている自分に気づくのである。
大人の恋愛物がお好きな方にお薦めの極上のJUNEである。


【DESPERADOシリーズ全作品】

【More・・・】

光風社出版/後に 光風社出版クリスタル文庫(発行:成美堂出版)

〔第1部〕
DESPERADO 1 『時が過ぎゆきても』 (1991年)
           収録作/ AS TIME GOES BY/WILL YOU LOVE ME TOMORROW
DESPERADO 2 『タイトル サマータイム』 (1992年)
           収録作/ SUMMERTIME/DANNY BOY
DESPERADO 3 『鎖の封印』 (1993年)
           収録作 / BALL AND CHAIN/HOME AGAIN
DESPERADO 4 『メルセデスベンツ』(1993年)
           収録作/ MERCEDES BENZ

〔第2部〕
DESPERADO 5 『オール・イズ・ロンリネス』(1997年)
           収録作/ ALL IS LONELINESS
DESPERADO 6 『心の欠片(かけら)』(1999年)
           収録作/ PIECE OF MY HEART
DESPERADO 7 『オールド・フレイム』

クラークとトニーのMINI DATAが本館【柏枝真郷の部屋】にあります。



*この記事は website【CAFE唯我独尊】から移行しました。




テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

09:00  |  柏枝真郷  |  TB(1)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●はじめまして

すみかさん、はじめまして。

このたび、柏枝真郷さんのデスペラードシリーズのレビューを探していたら、このブログ(サイト)を見つけて嬉しさのあまりコメントさせてもらいました。
デスペラードシリーズは昔一度挫折したことがあるんですが、最近また読みたいなあと思って探したら絶版になっていて愕然としています。
さっそく復刊ドットコムに投票してみたものの・・・絶版って・・・悲しいです。

TBを張らせてもらっていいでしょうか?
それとこのブログのリンクをいただいていきます。

では、また寄らせてください(ぺこり)
霜月うまれ |  2008年11月28日(金) 15:03 |  URL |  【コメント編集】

●霜月うまれさん、はじめまして。

コメントとTBをありがとうございます♪

デスペラードシリーズ、もう絶版になっていたんですか。
文庫版で復刊して喜んでいたんですけど…。
ライトノベル系はなんだか本のサイクルが短くて、私も後になって買っておけばよかったと後悔することが多いです。
もっとたくさんの方に復刊活動に強力していただけるように頑張るしかないのかもしれませんね…ちょっとじれったいけど。

レスが遅くなってしまって、ごめんなさい。 後ほどこちらからもTBをお願いします~。
すみか |  2008年11月29日(土) 23:32 |  URL |  【コメント編集】

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://meimu2.blog70.fc2.com/tb.php/411-480f9396

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

復刊の協力をお願いします(ペコリ)

『復刊ドットコム』にて、新たに新規リクエストをさせていただきました。 柏枝真郷さん特集。 デスペラードシリーズが文庫化された当初は...
2008/11/28(金) 15:04:05 | 11月の読書家

▲PageTop

 | BLOGTOP |