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2003.06.12 (Thu)

「MIKADO -帝-」 かわいゆみこ

「お前が幸せであれるように…」



mikado.jpg 「MIKADO―帝」(ビーボーイノベルズ)
 かわい ゆみこ
 前編 1997-05/後編 1997-06








マフィアの勢力争いに巻き込まれ、両親失った史貴、麻里絵、アレックス。3人はマフィアの帝王、ハーベイに引き取ら、養子となる。孤児達はハーベイの息子イェインとともに育てられるが、貴史には、アレックスの隣だけが安息の場所だった。
成長した彼らはマフィアのファミリーとして、過酷な運命に巻き込まれていく。


仮初めの家族に交錯する愛憎をじっくりと描いた、ハードロマン。
12歳で輪姦され、男性恐怖症となる麻里絵、
その麻里絵への愛を歪んだ形で史貴に向けるイェイン、
どこまでいっても麻里絵の代用品でしかないと自分を見失いつつある史貴の、唯一の拠り所となる
アレックス。
そしてアレックスは、イェインを、そして組織を守るために育てられた、ダークな存在である。
ファミリーとして寄り添いながらも、孤独な人間関係が重苦しくて、やるせない。

【More・・・】

残念なのは、誘拐、強姦、ヤク漬け、刺青と、花郎藤子氏の『禽獣の系譜』と少々被ってしまうことかな。
考えてみれば、極道にしろマフィアにしろ、相手を完膚なきまで叩きのめすというか、滅茶苦茶に傷つ
ける手段としての選択肢は広くないだろうから、やむを得ないのかもしれない。BL小説の手法に臓器
売買などは、たとえ使いたくても、色っぽくないから編集部に却下されそうだし。でも、作品の切り口は
全然違うので、誤解なきように。

流されるしかないような史貴の女々しさに苛立ったりしたが、終盤になって、それもかわい氏の計算
だったことに気づかされる。

「後ろを振り返っちゃいけない、麻里絵」

麻里絵の代用品という立場に自らを押し込めてしまった史貴は、自分をありのままに見つめてくれる
瞳を得たことで「自分であること」に自信を持つ。
そのとき初めて自分の中に抑圧されていた史貴の、強靭でしなやかな精神は前向きな生き方を選ぼ
うとする。
史貴は母に託された妹を、血を吐くような思いで愛する人に託す。
だが彼自身にとって、それは未来の見えない選択でもある。
ここで「いよっ、男だねえ」と言ってしまえる人は、オ・ト・ナ(笑)。
人は、好きな人のためだけには生きられない。生きるための拠り所でもある「愛」を捨てても、守るべ
き者がある。たとえ、その先にあるのが絶望だけだとしても……。

かわい作品の中ではあまり人気は高くないようだが、たぶん、そのあたり――愛を貫いて欲しいと
願う若い読者層にはそぐわないためかもしれない。
それぞれの孤独な魂は、最後まで救われたとは言い難いのだけど、いつの間にか引き込まれて、
一気に読み切ってしまった。寂寥感が残る作品である。



*この記事は website【CAFE唯我独尊】から移行しました。

テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

23:52  |  かわい有美子  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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