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2004.04.19 (Mon)

「上海金魚」 かわい有美子

「俺が、怖い?」


4773002638上海金魚 (CROSS NOVELS)
かわい 有美子
笠倉出版社 2003-05

by G-Tools

しっとりとした花のような色香を持つ水端佑季の恋は、初めて訪れた異国の地、上海で終りを告げた。男の狡さに気付きながら、嘘を信じていた佑季は突然の別れに傷付き、旅先で出会った男、滝乃と体を重ねてしまう。滝乃の包み込むような優しさに、つかの間の関係だとわかっていても、心惹かれることを止められない佑季だったが…。


今、もっとも熱い都市・上海の雰囲気をたっぷり味わいつつ、切なくも愛しくなるような極上の
大人の恋愛を堪能できる。
ストーリーに大きな起伏はないのだが、丁寧に点景を描いていく淡雅な筆致といい、花本安嗣氏の
絶妙なイラストといい、どこかノスタルジックな空気を漂わせ、セピアカラーの恋愛映画を楽しんだ
ような満足感を得た。


【More・・・】

男の狡さに気が付きながらも、佑季はその嘘を信じようする。だが、男の不実を目の当たりにして、
佑季は別離を決意する。その佑季のやるせない切なさをも、かわい氏はいつものように淡々とさり気
なく描いていく。
傷ついた佑季だが、上海を案内してくれる滝乃の優しさに触れ、ささくれた心が癒されて行く。二人が
少しずつ好意を寄せていこうとする過程が丁寧で好感が持てる。まどろっこしいかもしれないけれど、
ベッドに直行させればいいってもんじゃないのだ(笑)。
旅の最後に身体を重ねたのは肌恋しさかもしれない。旅から帰って現実の生活に立ち戻ってみれ
ば、それは儚い夢のようにしか思えない。
互いに心惹かれながらも日常は動いており、やがてその想いを諦念するころ、二人は再会する。
このあたりはラブストーリーとして常套でありながら陳腐に陥らず、魅力的な1冊となっている。

また本作は、幾度となく物語の視点が変わる。
当初、滝乃の視点から上海での佑季との出会いと印象が綴られ、佑季の視点では自分の性癖に
気づいてから、それまでの経緯を語っている。その後も視点変更されるのだが、転換がスムーズで
違和感がない。さらに言えば、視点が転換することで二人の人物の状況や心理描写が説明文に
ならず、すんなり理解できるようだ。このあたりは作者の力量ってものだろう。

タイトルの金魚は、二人の上海での時間の象徴。懐かしい時間に迷い込んだような、柔らかな時間が流れていく。つい金魚を飼ってしまいたくなるような、久しぶりにときめいた作品である。


*この記事は website【CAFE唯我独尊】から移行しました。

テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

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