FC2ブログ
2020年08月 / 07月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫09月

2005.10.05 (Wed)

「照柿」高村薫

1994年7月/講談社

合田刑事、ついうっかり恋をするの巻。


帯に「魂をゆさぶる現代の"罪と罰"」とあるが、私はアガサ・クリスティの、実行に移すまでの過程からその瞬間に向かっていく様を描いた『ゼロ時間へ』を思い出した。もちろん内容はまるっきり異なるのだが。
本書でも、前作『マークスの山』のような警察小説的ニュアンスは引き継いでいるものの、今回のそれは物語の背景に過ぎない。 主軸になっているのは日常の中で何かが少しずつずれていく心理描写である。人間の業や熱波のような狂気が交錯し、やがて「ゼロ時間」へと導かれてしまう。ただし、間違ってもこの小説はミステリではない。

8月の狂いそうになる暑い夏。合田刑事は電車の飛び込み事故に遭遇し、そこで偶然出会った女に一目惚れしてしまうところから話は始まる。
合田の女への恋情は日に日に強くなるが、女は合田の幼なじみである野田達夫の愛人だった。1人の女をめぐり、男たちの歯車が狂っていく。
しかし、物語は遅々と進まない。合田と野田の過去と現在の、執拗なくらい綿密な描写が延々と続く。 それはまるで暗い海の底へ引きずり込まれるようで、息苦しさを感じるほどだ。
でもそこで放りだしてはいけない。最後まで読むと、彼らの今までの生き様が鮮やかに浮き上がり、茫然とする。

それにしても驚くのは合田さん。人間の弱さも狡さもあからさまにされた合田の壊れっぷりが凄まじい(笑)。
そして一番印象深かったのが、紬の着流し姿の義兄の加納が亡父の霊前で合田とともに聖書を読む場面――着流しに聖書……素敵♪

line_b03_1.gifline_b03_1.gifline_b03_1.gif
【関連作品】
■ マークスの山(上・下)
■ 照柿
■ レディ・ジョーカー(上・下)
■ 李歐(りおう)
■ リヴィエラを撃て(上・下)
■ 神の火(上・下)

テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 本・雑誌

00:55  |  高村 薫  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://meimu2.blog70.fc2.com/tb.php/472-23357cca

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |