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2003.03.28 (Fri)

「剣の誓約」池波正太郎

新潮社 『剣客商売 』収録(第2話)

戦のない太平楽な当節の道場経営では、弟子を適当にあしらい、時々わざと打たれてやって機嫌をとるのが必要である。つまり、海千山千の大狸である小兵衛ならともかく、若さゆえに潔癖で実直な(朴念仁ともいう)大治郎に経営手腕が期待できるわけもなく、道場としてはおよそ時代遅れなのだが、本人はそれを気にもしていない――いいなぁ、こののんびり加減(笑)。

だが、そんな世の中にも勝負に生きる剣客がいる。その「剣客の宿命」が本作のテーマである。剣客の宿命とは、「好むと好まざるとにかかわらず、勝ち残り生き残るたびに、人のうらみを背負わねばならぬ」ということであり、「負けたものは、勝つまで、挑みかかってくる」ということであり、「勝負をはなれたものとても、ついには勝負から逃れることができぬ」ということ。

大治郎の師匠である嶋岡礼蔵はこの宿命のために遠路江戸にでてきた。死を覚悟した勝負である。その「剣の誓約」の相手である柿本源七郎もまた、心臓の病をおして、剣客として勝負に挑もうとしていた。
だが、源七郎の弟子・伊藤三弥は夜陰に紛れて弓を射り、礼蔵を殺害するも、大治郎に右腕を切り落とされてしまう。
「剣の誓約」を汚され、そのような弟子に三弥を育ててしまったことを悔やむ源七郎だが、三弥に源七郎の悲憤は理解できない。三弥は師であり情人である源七郎を護ったつもりだからだ。
このあたりの三弥の心情は恋狂いの「女」だ。池波氏の作品全体から図れるのだが、氏の根底には根強い女性不信が垣間見える。その部分を反映しているのが三弥のなかにある「女」ではないだろうか。
剣客としての死を望む源七郎に応え、礼蔵の代わりに立ち会う小兵衛と、その試合を見守る大治郎。その瞬間、秋山親子は「剣客の宿命」をまたひとつ背負うのである。

ここに登場する伊藤三弥は後日再び、秋山親子の前に姿を現す。それが次にご紹介する『妖怪・小雨坊』である。

テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 本・雑誌

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