FC2ブログ
2020年08月 / 07月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫09月

2002.11.25 (Mon)

「白狼綺伝Ⅰ―魔術士の貌」「」斎城昌美

戦いに倦み、喪失感に打ちひしがれてアシュラウルは海洋を渡った。新たな大陸にたどり着こうというとき、アシュラウルの養い親である神々の王ロア・スタンの弟、叔父神クウィル・ヴォルの宮殿・霧幻宮へと強引に招かれる。
神としてではなく、ただの人間として地上に降り立つと決意したアシュラウルは、半ば従者ベノウィックを人質にとられた格好でクウィル・ヴォル神の情人となることを強要される。その見返りとしてクウィル・ヴォル神が示したのは、アシュラウル自身が望むと望まざるにかかわらず、新大陸での彼の後ろ盾になることとだった。生きようとするを気力すら失ったアシュラウルにとって、圧倒的な神の力を持つクウィル・ヴォルの熱情は飲み込まざるを得ない選択でもあった。
新しい大陸の知識(言語、歴史、生活など)を学びながら霧幻宮でひと冬を過ごし、アシュラウルは、ベノウィックとともに人間界へと降り立つ。
争いのない世界を夢見るアシュラウルだったが、そこには大陸制覇を目論む獅子王・ダリュワーズの統治するカイムジェサ帝国の暗い思惑が蠢いていた。

さてこの2人、学習したとはいえ、いかんせん新大陸では世間知らずである。見目麗しくもあり、うっかりすると男娼宿に売り飛ばされてしまうかもしれない(強いからその心配はないんだが)。そこで与太者に絡まれて困惑する2人を助けたダナスターンと旅の道連れとなる。だがカイムジェサ帝国によって滅ぼされた故国シヴァートの再興を願うダナスターンとの出会いは、アシュラウルを再び戦いの中に身を置かせることでもあった。

気儘な旅のつもりがニーヴァンの皇太子を救ったことがきっかけで、アシュラウルはその手腕を高く買われ、皇太子の臣下となることを求められる。。
ニーヴァンでは内乱が起こっていた。2度と剣を握るまいと決意していたアシュラウルだったが、ダナスターンの心情を察して、内乱収束までとの約束で軍師として参戦する。
ニーヴァンの内乱は魔術師の陰謀だった。さらに影で糸引くのはカイムジェサ帝国だ。次第に、
戦いの深みにはまらざるを得ない状況にアシュラウルは追い込まれてゆく。
だか神が人間界に干渉することは養い親であるロア・スタンの定めた掟に背くことでもある。苦悩しつつも精霊王として、アシュラウルはニーヴァンの内乱を鎮静へと導くのだが――可愛い姫様に結婚を迫られてベノウィックやダナスターンと共に夜逃げするのだった(クスス)。

長命族が主権を握っていた『黒狼秘譚』編よりも、短命族(普通の人間)しかいない大陸が舞台となる『白狼綺伝』では、アシュラウルの半神としての苦悩はさらに深まることになる。ましてや(この時点では)友となるダナスターンにもはっきりと己の正体を打ち明けられない。
自身の秘密を抱えたまま、そしてダナスターンは友に胡散臭さを感じながら命を預けるような付き合いを重ねていかねばならないのだ。これって、互いに結構しんどいことだろう。
大勢の命を奪ったがゆえ、もう二度と戦いに関わるまいとするアシュラウルの困惑や、半神としての苦悩を、決して理解できないとしても、友を理解しようとするダナスターンがかっこいい。私にとって、かくあってほしいと思う男の理想像かもしれない。

ところで、今はなき大陸書房版の『神狼記』はこの巻から始まる。えーと、はっきり申しまして、中公版より大陸版の方がクウィル・ヴォル神とアシュラウルの爛れた関係(笑)がセクシーに描かれています。読み比べてみれば編集部の方針で書き直さざるをえなかったとはいえ、「もったいない」と思うのは私だけではあるまい(爆)。
00:27  |  斎城昌美  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://meimu2.blog70.fc2.com/tb.php/546-6793c0e9

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |