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2003.09.09 (Tue)

「喪神の碑」全5巻 津守時生

「最後の一呼吸まで戦うと決めたときから、 苦痛にも恐怖にも膝を折ったりしません」

by マリリアード・リリエンスール


平成2年~3年/角川書店・スニーカー文庫/イラスト・小林智美
各巻タイトル(全5巻)
1、ラフェールの末裔/2、ウロボロスの影/3、カイユの封印/
4、フィラルの戒厳令/5、エリノアの光輪

ジョナサンが求人広告に応じてなりゆきで乗り込んでしまった宇宙船の船長にして超絶美形の青年・マリリアード・リリエンスールは、生化学兵器によって惑星ごと滅ぼされた、天使の末裔と呼ばれるラフェール人の生き残りだった。彼の目的はラフェール文明の再興。
ラフェール人の根絶をもくろむ大規模なテロ集団の陰謀と丁々発止の闘いが続く。だが船長の身体は刻々と病魔に蝕まれていく。壮大かつ波乱万丈なスペース・オペラ。

とにかく導入部から勢いがある。SFということで敬遠する向きがあるかもしれないが、事情が分らないまま宇宙に放り込まれ、やがて世界観が明らかになるに従い、どっぷりと飲み込まれてしまう。
滅亡しつつあるラフェール人の王族直系の最後の生き残りであるマリリアードは、どうしても他者より重責を託される立場にある。文武両道の超絶美形で、自らも死の病に侵されながらも艱難辛苦に立ち向かう悲劇の王子。だが本人は常に前向き、悲壮感の欠片もない――いかにもエンタテイメントな設定だが、英雄譚ではない。むしろ、すべての責任を一人の人間に押し付け、頼り、すがりつつも、自らの置かれた状況を諦念し、因習にしがみつくことで自分たちの在り方を肯定しようとする者の傲慢さを批判し、対等であるべき人間関係を描いている。
マリリアードのあり方は「親」のあり方だ。そして、心理的に親から独立して子は一人前になる。
しかし、それも宇宙規模になると大迷惑。ラフェール滅亡の引き金となるのも、いわゆるアダルトチルドレン的な屈折した心理による。つまり、親殺しによって自立するという理屈。
何も悪いことをしていないのに殺される方はいい迷惑だが、愛と憎しみは紙一重。愛憎に雁字搦めにされた「子」にしてみれば、自分が生きるための傲慢な理由。むろん、どうにも正当化できないのだけどね。
だが、彼らに向けるマリリアードの視線は常に優しい。自分自身に対する厳しさがあってこそ、人は人に対して優しくなれるのだろう――耳が痛い。

「男の色気と美貌、女の度胸と腕力を追及する」作者の言葉通り、善人悪人入り乱れてのキャラも魅力的。中でも、名前だけは耽美な超絶美形コンビ、マリリアード・リリエンスール(マリリン)とオリビエ・オスカーシュタイン(O2)の漫才が最高。このコンビの、何ものにも換え難い男の友情にうっとり…弱いんだな、こういう関係(笑)。
重いテーマをエンタテイメントにさり気なく織り込んで、キレがよくてノリがよい――新刊が出るたびに1巻目から読み直し、もちろんその合間にも再読を繰り返し…と何度読み返したことか(笑)――津守ワールドの真骨頂♪

補足として、本作で張られた伏線が後の『三千世界の鴉を殺し』シリーズにしぶとく生きてくる。


4044117039喪神の碑(いしぶみ)〈3〉カイユの封印 (角川文庫―スニーカー文庫)
津守 時生
角川書店 1991-01

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